「娘は戦場で生まれた」
この作品は2012年から2016年の
4年間にも及ぶ戦闘だ。
アレッポでの出来事を
結婚して2児の母となった
ワアド・アル=カデブ自身が
つぶさに記録したものだ。
さすが、
アカデミー賞
ドキュメンタリー部門の
ノミネート作品である。
彼女は大学を卒業し、
医師である彼ハムザと結婚した。
そして娘を授かった。その名はサマ。
サマとは「空」という意味だ。
「アレッポの戦い」では
アサド政権による
政府軍の市内の制圧がなされ、
反体制派は撤退[した。
新聞記事では、
そんな一言で片付けられてしまう
歴史の1ページにしか過ぎない。
オススメ度:★★★☆☆(3.5)
理由:日に日に進んでいく状況。
「まさかこんな事にあるとは…」
想像していなかったのだと思う。
罪のない子どもまでもが犠牲になる。
結局、誰が悪いのか?
何故、死ななければならないのか?
生々しい、凄まじい
その内戦の姿をえぐり出している。
民族浄化といった簡単なものではない。
「政権に抵抗するには、
わたしたちが日常を続けること。」
しかし、
命を掛けて残る必要などないようにも思う。
死んだら終わりだ。
様々なことを投げかけてくれる
この作品を観るには、
アサド政権のシリア軍、そして
それを支援するロシア。
そしてイラン。
対する反体制派は
イスラム革命防衛隊・ヒズボラはじめ
シリア民主軍・国民連合、
そしてクルド人民防衛隊に加え、
あの過激派組織ISILも入った
反対派は一枚岩ではない。
様々な勢力に分かれ、
時に対立しあっている状況だった。
いわゆる寄せ集めの団体の集まりだ。
それを、
サウジ・カタール・トルコなどが
支援するといった構図。
ただ、ドキュメンタリーでは
そこまでは描ききれてはいない。
あのシリアの北部に位置する
最大の都市アレッポ。
首都のダマスカスより
人口は多い。
そこで行われた激しい戦闘。
始末が悪いのは、
現政権のアサドの政権も
アルカーイーダ系の反体制派も
どちらも最悪。
結局犠牲になるのは、一般市民だ。
ナチスを思い起こさせる
非人道的な扱い。
無差別攻撃に近いロシア空軍による
空爆。これにより攻勢にでた政府軍は
反体制派が支配するアレッポ東部を
包囲して制圧をしていった。
中東の内戦は、シリアのラッカ、
リビアのミスラタとベンガジ、
そしてイエメン、イラクにも及ぶ。
いずれも市街戦となりった。
その様子が良く分かる。
反体制派は、結局は政府軍の攻勢で
不利な状況となったため、
一般市民に紛れ込んだことで、
結果として、病院が狙い撃ちされたんだ。
ドキュメンタリーを観る限りは、
住民が一体となって、
アサド政権側に抵抗しているように描かれていた。
住民が必ずしも
ISILを指示しているとは思えないが、
それでも
「今のアサド政権よりはマシだ」
と言っていたのが印象的だった。
2012年の1年前の2011年には、
「アラブの春」と呼ばれたチュニジアからの
余波がシリアにも波及した。
それがシリア内戦と発展したんだ。
抗議運動も穏健な状態で続けば良いが
どこでも、激化するようだ。
歴史的な文化遺産も破壊された様子が伺える。
対立は、
何も産まないことが
この作品でよく分かる。
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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