コメディ作品で,心もほっこり『フェアウェル』(The Farewell)

フェアウェル(1)


オススメ度:★★★★☆☆(3.8)
理由:コメディ作品でありながら,
温かい気持ちにさせてくれる,
面白さ,てんこ盛り.
涙あり,笑いあり,ほっこり満載で
充実した100分間を楽しめる.
さすがはスタジオ「A24」だ.

フェアウェル(2)

監督の実体験を元にした作品だ.
監督は中国で生まれ米国で育った
からこその描写.エンドロールには,
本物のおばあちゃんも登場といった
サービスぶり.

ニューヨーク暮らしの中国移民の家族.
そこへ悪い知らせが舞い込んだ.
中国長春に住んでいる祖母が末期癌で
余命3ヶ月と言われたのだ.
もちろん祖母はそれを知らない.

そこで優しい嘘を…親族一同が考えたのだ.
祖母に最後にひと目会うために.
親族一同がでっち上げの披露宴を画策した.
親族は,米国,日本,そして中国….と
各地に散らばっている.
全員親族集合というわけだ.

でっちあげ披露宴は,
日本に住む孫の結婚披露宴を中国でヤルというものだ.
親族全員集合…

ルールは集まった親族は
絶対に祖母に癌のことを,
本当の病気を
悟られまいとすること.

そのために全員必死に演技する.

余命幾ばくもないならむしろ,
「きっちりと本当のことを伝えるべきだ」と
主張する孫娘.
孫娘は物心ついた時から
祖父母の手で育てられたようだ.
そして幼いいうちに親とともに渡米.
ほぼ気持ちはアメリカ人の感覚だ.
それでいて,
亡くなった祖父に対しても,
そして祖母に対しても
非常に熱い想いがある.

それに対して
「絶対に悲しませたくないから
本当のことは言わない」とする
家族を含めた親族.

合理的な考え方をする孫娘と
儒教的な考え方をする家族たち.
どちらが正しくて,
どちらが間違っている…とは言い切れない.
そんな葛藤の中で,
どちらの気持ちもわかる.
祖母が大事なのだ.
温かいモノを感じられる作品だ.

この作品を通じて,
中国の家族構成.
祖父母と孫の関係.
移民文化が垣間見られる.

特に中国では,
孫を祖父母が
育てるというから,
そういう家族構成を知れば,
その孫娘の祖父母に対する想いが
よくわかる.

祖母は孫娘を想い,
孫娘は祖母を思いやる.
「今は失敗していても
必ず上手くいくから…」
そういう祖母の優しさ.

顔に出るから,気をつけろと諭す親族,
でも,孫娘よりも特に子どもたちの方が
一番隠し切れないところが実にいい.
親族全員が,でっちあげた披露宴.
そしてそこで祖母に
最後のお別れかもしれないと思っている親族.

離れて暮らしていると,
その一言一言が一期一会.
それが最後の挨拶だと言うのは,
たくさんある.

最後のお別れは,「また遊びにきてね」

そんな何気ない普通の別れの会話.
それが胸を打つ.
再び渡米する日,
最後までタクシーを見送る祖母.

昔は日本にもあった
昔懐かしい家族思いの香り.
じいちゃんばあちゃんを大切にする想い.
終始,ほっこり…安心して観られる作品だ.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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