オススメ度:★★★★☆(4.2)
理由:これ程,見終わってから
尾を引く作品も珍しい.
折しもSDGsの5項目の目標
「ジェンダー平等」について,
考えさせられてしまう.
決して爽快感覚ではない.
むしろ重く心に引っかかる.
映画のワンシーンが残る.
そんな作品だ.
LGBTではなく,
いわゆる性同一性障害,
トランスジェンダーの
苦しみを描いた作品.
その障害を持って生きるには
余りにも苦しい.
芸能人はじめ有名人は別にして,
一般人には世間からは
差別と偏見から逃れられない.
生きていくのは辛すぎる.
こんなにたくさんの人が居て,
そんな中で,何故自分だけが,
こんな目に.何で….何で…と,
思わず,一人でいる時に
叫んでしまう.
草彅剛が演じる武田健二こと
凪沙(なぎさ)は,そうした
トランスジェンダーを抱えてる.
他方,彼の親戚には,
女性で生まれながら,自分の子すら
育てることができない
ヤンキーの母親がいた.
その母親から虐待を
受けていた女子中学生の
一果(いちか).
偶然にも,
その女子中学生を
彼が預かるはめに….
彼女もまた,
何で拾の母親から虐待を
受けなければならないのか,
何で私だけがこんな目に…と
思っていたに違いない.
二人の同居生活が始まった.
そんな女子中学生の彼女は
偶然にも目にした
バレエ体験教室.
彼女は,そこから
その才能が開花していく.
人は,たとえ辛いことが
あっても,
打ち込めるものがあると,
どんな状態でも変化し,
表情も豊かになっていく
ものかも知れない.
本人が気づかないことも
多いが,周囲の人の方が,
それに気づくことが多い.
そして,彼女のバレエ実現の
ために,稼ごうとする姿が泣ける.
実の母と子とよりも,母らしい彼.
見返りの無い愛を感じた瞬間だ.
だから泣けるのだ.
障害やコンプレックス,不幸….
どんな人にも「何で私だけが,
こんな目に…」と思うことはあろう.
その重みは人によって大小様々.
比較しようがないが,
誰しも持っているように思える.
金銭的に裕福でも「不幸」.
金銭的に恵まれていなくても
「幸」ということもあろう.
辛すぎる心そして,身体の痛み.
衝撃が走ります.
複雑な想いがドッとのしかかる.
草彅剛の役者としての存在感と,
女子中学生の一果役の新人,
服部樹咲.演技未経験の新人とは
思えません.ただ4歳の頃から
バレエを始めていただけの
ことはあって.踊りは美しく
華麗です.
はじめは新人だから下手なのかな?
と思って観てましたが,
それは違っていて,ぎこちなさは,
母親のネグレクトからのものだった.
どんどん,深まる二人を観ていると,
途中でそれに気づく.
そう思うと,やはり
この新人の演技も素晴らしい.
心に余韻が残る.
決して爽快な感じではないが,
この衝撃はまさに,
これぞ映画作品といいたい.
そして粋な計らいで
エンドロールの最後まで目が
話せない作品だった.
まだ,重い余韻が残っている.
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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