コロナ禍の今だからこそ必要なもの「未来へのかたち」

未来へのかたち

オススメ度:★★★☆☆(3.4)
理由:町おこし的作品でもあるし,
水戸肛門的作品.
先は読める,単純な展開.
非現実的な世界.文科省推薦とでも
言えそうな作品だ.
でも,そうとは知りながら
惹き込まれていくのは,
それだけ魅力があるということだろう.

それでも今の御時世にはこうした
作品でほっこりする…そんなことも
必要ではないか.
そんなことを感じた作品だ.

原作は坊っちゃん劇場の舞台劇
『シンパシーライジング』を
大森研一監督が映画用に
脚本したものらしい.

愛媛の砥部焼.はじめて知った.
舞台は,その砥部焼で,
東京五輪のオリンピック聖火台を
創ることに.そこでデザイン制作
コンペがはじまった.コンペを
通じてデザインを募集する設定.
そんな怪しいコンペに地元の
窯元たちの中には,
「どうせヤラセだろう!」と
揶揄する人も.

どこにも必ず居る「出来ない」
「ヤラセだろう」「意味あるのか」と
いった否定的な意見.出来ない理由を
まくしたてる人たち.また,費用に
対しての補償を行政に求める人たちも.
代償がないとやらない.
それだけで人は動くのか.
人のためにする.すると後々自分に
返ってくることもある.いや,見返り
自体を期待しないのかもしれない.
そうした精神や魂.魂が喜ぶことを
基準に行動した方がいいはずだ.

そんな中で,
親子・兄弟の対決,葛藤,等々,
短い時間に様々な人間模様が
行き交う中で,どう過去と対峙し,
どのようにわかり会えない人と
和解し未来に繋いでいくか,
そうした関係を描いた作品.

砥部には温泉があるのか.
あるいは銭湯なのか.
よく作品中に出てくる.
悩みがあれば銭湯会議.
何やら,そこに行って
みたくなる.

父親は大きな窯元を持ち,
対する息子は小さな窯元を構える.
息子は斬新な新しい砥部焼を
追求している.さて,コンペは
どうなっていくのか.

なぜ,こんなに親子や兄弟で
揉めるのか.その火種となった
母親の死とは…
原因のなる事件とは?
一度壊れた陶器のような家族.
果たして元通りに再生するのか.

確かに水戸黄門的な作品では
あるが,これまた役者が
素晴らしいので,
ついつい惹き込まれていく感じだ.
雲切の印象が深い内山理名.
おっさんずラブの大塚寧々.
久し振りのスクリーンで
会えて良かった
チャラいバイトの
青年も意外に「ここぞ!」
という時に活躍する.
娘は不器用だが
心優しいのが伝わる.

モノづくり.一流の作品
として感動するのは「人」の存在.
モノづくりはやはり「人」
仲間,地域で,皆で力を合わせて
一つのものに取り組む姿勢.
批判ではなくて,
どうしたらできるのかを
考え抜くこと.
完成した瞬間の感動する.

他人の落ち度を指摘する
注意する風潮,それ自体は
事実なので,認めることは必要だ.
でも,そこからどうするかが
もっと必要なのだ.
コロナ禍の中にあって,
ちょっと「ほっこりする作品」も
いいのかもしれない.

鋭い社会批判.悶々として
モヤモヤ感を懐きながら映画館を
後にする作品もいいが,
こうした世界観,皆が幸せになる
ような温かい作品も良い.
非現実ではあるが,
今の時代だからこそ,こうありたい,
こうしたいという道標を示すような
作品も必要かもしれない.
本作の原作は舞台劇.
舞台劇だったら,
音と光で,幕引きのタイミング
どのような演出だった
のだろうか.そちらも気になった.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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