オススメ度:★★★☆☆(3.0)
理由:企画から5年というウエダ監督.
10代の踏み出す一歩.サブカルの世界だ.
本作は王道の青春映画では
ないかもしれない.
その中にあって,
切なさよりも,むしろ虚しさ,
気だるさが残る.
なんとも言えない気分だ.
これは劇場でみるべき作品だ.
よくわからない女の子小梅.
兄の自殺をトラウマのように
背負う磯辺.原作はマンガで
浅野いにお作.
10年ほど前に描いた漫画
『うみべの女の子』
それを現代風にアレンジし
実写映画化.海辺の田舎町を
舞台にした作品だ.
うみべの女の子とは,
海岸で拾ったSDカードに
残っていた画像データだった.
この物語は中2からはじまる.
衝撃的な性描写が続く,
わりとトゲのある作品だ.
佐藤小梅役を石川瑠華,
磯辺恵介役を青木柚が演じる.
共に主演二人の
体当たりの演技には
凄みがった.二人とも
オーディションで選ばれた
だけのことはある.
この二人が演じて
いるのは中学生だ.それを
演じきれるのは素晴らしい.
まるで本当に中学生が
そこに居るかの演技だった.
心にぽっかりと穴が空いている
虚しい感覚.懐かしい時代.
そんな時代もあったのかも
しれない.常に虚空な自分が
取り残されていく感覚だ.
それを埋めるかのような性交.
物足りなさというのは,
それでも埋まらないのだ.
愛に飢えていて,
愛されたいけど,
それでも愛せないという感覚.
何不自由もなく育っていても,
いや,過不足なく育ったからこそ,
逆に挫折に弱いのかもしれない.
平凡そうに見えていて,
実はそういう彼女にこそ
非凡で大胆なことをするのかもしれない.
普通すぎるからこそ,
人よりも先に経験したいと
思うのかもしれない.
そして心にぽっかりと空いた穴.
その穴を埋めるようなセックス.
罪悪感に苛まれながらも
次第に心を許し合っていく.
そこには神も仏もない.
兄の死に対する磯辺の思い.
そしてその行動.
だからこそ磯辺は小梅に
辛くあたったのかと思うと,
全部ではないが,その気持ちには
共感する.
海辺と言えば,聞こえはいいが,
遠くから見れば美しい.
でも実は,近くでよく見ると
あちらこちらにはゴミだらけ.
人波も海辺の波も同じだ.
兄のイジメ,自殺,父と子の関係,
性と暴力.その間接的なメッセージが
伝わってくる.
好奇心が先走り,
後先をじっくり
腰を据えて考えない中学生.
作中に流れる
はっぴーえんどの
「風をあつめて」が耳に馴染む.
虚栄心で素直な心を
見透かされないようにする.
言葉に表しようのない
苦しさや虚しさを
味わうことができる作品だ.
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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