オススメ度:★★★★☆(4.1)
理由:中東でなく,日本に生まれて良かった.
しかし,そんな単純な想いだけではない.
この作品は素晴らしい.
それは感動ではなく,この複雑な想いだ.
世界では,こんなことがあるだ.
これは必見だ.ビルヌーブ監督の出世作とも
言われるだけに,もの凄いインパクトだ.
リバイバル公開に映画館に本当に行けて
良かった.これぞ映画だ.
過去と現在が飛び交う展開.
それにこの脚本と構成.巧みさに脱帽だ.
本作の原作は4時間にも及ぶ
戯曲「焼け焦げるたましい」.
それを映画として2時間11分に
凝縮した.アカデミー外国語映画賞に
ノミネートされた作品でもある.
この圧迫されるような感覚.
こんなことが人として許されるのか.
だれがこんなことを許すのか.
想像を絶する悲劇.
そしてこの作品を見終えた後の,
この何とも言えない悶々と残る
この想いは何なんだ.
母のナワルはなぜ,
謎解きのような遺言,
そして二通の双子の子に託した
手紙を残して亡くなたのか.
シングルマザーの元で育った
二人には,今も生きている父親.
そして兄の存在.
その父と兄を探すため
ナワルの母国を訪れる二人.
カナダから中東に向かう.
そこで知ることになる
母の壮絶な過去.
母の壮絶な物語が始まる.
その母の過去を探す子どもたち.
観客の方も一緒に探す旅に出る
ことになる.
貧困を脱するには,
やはり「学」しかないのか.
労働ではたかが知れている.
学問を身につけることで
生きることの意味を
知るのかもしれない.
しかし生まれながらにして,
幼い頃から「兵」として
育てられたとしたら,
そのような内戦の世界に
身をおくことしか,
生きる術はないのかもしれない.
幼い頃から考える力を
与えられないからこそ,
考えることを否定するしか,
生きていけないのだ.
大人は皆殺しされ,
子どもは兵隊として育て上げる.
そんなことがまかり通っている.
宗教対立・内戦で
壮絶で理不尽な体験をした人なら,
そこで「目には目を!」と
復讐という気持ちが
湧いてくる気持ちもわかる.
幸せとは何か.生きるとは何か.
カトリックが中絶を禁ずるとした掟は,
一見理不尽のようで実は
そうでないかもしれない.
この偶然の生命の誕生.
不幸な出来事で,
たとえ生まれたとしても,
それは生まれながらにして
不幸でもないかもしれない.
その人の将来はわからない.
未知数なんだ.
不幸になるのか,
そうでないのか,わからないんだ.
だとすれば,
可能性を求めてもいいのかもしれない.
一見間違いようにみえることでも,
後から気づくこともあるのだ.
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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