懐かしき昭和の時代が蘇る感動と感涙「サバカン SABAKAN」

SABAKAN

オススメ度:★★★★☆(4.1)
理由:これは和製スタンド・バイ・ミーだ.
あの懐かしい昭和時代.
何かのスイッチ,その気スイッチがONすると
当時のことが鮮明に蘇ることがある.
特にラストシーンがいい.苦くて甘い思い出.
遠くまで自転車で旅したい.隣の市に行くにも
ドキドキしながら思いが馳せたあのころ.
彼が作ったサバ缶のサバで作るあのにぎり.
それが少年にとって,どんなに感動を与えたのか.

本作に無性に感動したのは同年代だからだろう.
それでも10歳ぐらい下かもしれない.
何と言っても共感を生むのは,自分のこととして,
自分の記憶が呼び起こされることだ.
誰もが似たような体験をしたのではないだろうか.

昭和60年代,小5年の少年の二人の
忘れられない思い出.それは長崎県大村湾の
浮かぶブーメラン島にイルカを見に行くという冒険.
少年たちのコンフォートゾーンは
大人たちに比べれば僅かな範囲だ.
それでもドキドキ・ワクワクしながら時折,
不安に苛まれてハラハラを体験する.
ちょっとビビる危険があるからこそ,
コンフォートゾーンをちょっと出ると,
そこにはワクワクが待っている.
そんな無鉄砲な行動を
サポートするかのような親と,
喧嘩しながらも仲のいい兄弟姉妹が
そしてそこで知り合う人々.
その一つ一つのやりとりを
見ていてほんのりとする.
そして友との別れ.
少年の頃に体験した出会いと
別れが身にしみる.

普通に使っている「またね」が,
いつか最後の「またね」になることもある.
最後にしたくないからこそ,
「またね」と呼び合う.
これはひょっとして,だれもが一つや
二つは体験したことではないだろうか.
普段の何気ない毎日がどれ程,
貴重であったかを感じることができる作品だ.

好奇心多性で純真無垢ないたずら
好きな少年,愛情いっぱいで
それでいて自然体で接する両親.
自分が少年の頃のあるあるが
いっぱい収まっている.
斉藤由貴のポスターにキスする場面.
年上のお姉さんの胸ばかり見る少年.
思わず声をあげて笑ってしまった.
当時の親はどこでもそうだった.
やたら怒鳴り散らす夫婦と,
子どもにはビンタやげんこつ.

泣けた,泣けた.

少年が友達のお母さんの葬儀に
行って友達をみて涙をにじませた後に,
貯金箱に貯めてたお小遣い全額
サバ缶に変えてその友達に渡すシーン.
ミカン農家のおじいさんが
お別れにミカンを袋いっぱいぶら下げて
「売り物にならないボロだ」と
言って渡すシーン,
列車で互いに少年が「またね」を
ずっと交わし続けるシーン.
迎えに来た父が
「家に帰って母ちゃんの前で
赤ちゃんみたいに泣くんじゃないぞ」と
言いながら抱きしめるシーン.
家の前で帰りを待っててくれて
無言で抱きしめてくれる母.

「海のトリトン」が流れた時,
そうそう,朝10時ぐらいから
夏休みアニメ特集でやってたのを思い出した.
そして,今では絶対言わない言葉も,
小学校の頃は,なんの気無しに
ひどい言葉を発したり,
行動に移したりしてたことを思い出した.

これはオススメの作品だ.

投稿者プロフィール

アバター画像
天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
詳細プロフィールはこちら。
PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました