「家へ帰ろう」観ました

家に帰ろう
この映画は2017年のスペイン・アルゼンチン合作の映画。登場人物は比較的も少ない。少ないながらも、非常に感情が溢れ思わず涙する。そんな映画である。また「家へ帰ろう」と書いて(うちへかえろう)と呼ばせるあたりがとても粋である。

この映画は、88歳の老人がアルゼンチンからポーランドまでの13,000キロの旅をする物語。
主人公のアブラハムはユダヤ人である。彼は18歳の頃、ナチスのホロコーストから逃げ出して元々自分の家族が住んでいたポーランドの家に戻ってきた。ところが、既に元の家には使用人だった家族が住んでいた。収容される前まではポーランドで仕立て屋を営んでいた。その使用人に奪われたことになる。命からがら帰ってきた彼に対して使用人の冷たい仕打ち。でも使用人の子どもとは親友だった。その親友にアブラハムは命を助けてもらったのだ。忌まわしいナチスの記憶。父も母も妹も失った。ドイツという国に嫌悪感を覚えるアブラハムの気持ちも痛いほどわかる。祖国ポーランドをも口にしたくない戦争体験。

あれから70年。
アブラハムはブエノスアイレスに住んでいる。仕事は恐らくポーランドで営んでいた父親に倣って当時も職人だったのかも知れない。ブエノスアイレスでも仕立て屋をやっていたのだ。そんな彼は、当時の逃走により負傷した足がとうとうこの歳になって一層悪くなり、住み慣れた家を後にして、老人ホームに入居を子ども達から進められてしまう。

老いる自分にできることとは何か。それはあの時に約束。70年前の約束だったのだ。
それは助けてもらった親友と約束した「最後のスーツ」をアルゼンチンからポーランドへ親友に手渡す旅に出たのだ。88歳にして家出である。

旅の途中、飛行機の機内の一見今どきの若者、マドリードのホテルの一見冷たそうな女性店主、パリのプラットホームで出会ったドイツ人の人類学者との出会い、そして病状が悪化してポーランド・ワルシャワ行きの列車で倒れて救急搬送された病院で担当になった看護師。いずれの旅先でも、良い出逢い助けられながら旅を続ける。出会いとは偶然。それでも必然なのかも知れない。自然に手を差し伸べたくなるそんな出逢い。

果たして彼は友人に逢えるのか。泣ける。

家出した場所も「うち」、ポーランドの目的の先も「うち」

THE LAST SUIT逢いたい時に会いたい人に会いに行く。したいことを我慢しない。日頃の忙しさに流されない、そんな人生を送らないと一生後悔するかも知れない。感情の震えが止まらない、そんなほっこりする作品です。★★★★☆

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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