「女王陛下のお気に入り」観ました

女王陛下

アイルランド、アメリカ、イギリスの合作映画。
この作品は18世紀の植民地時代の大英帝国が舞台。イギリスの議会制を垣間見る作品でもある。アン女王とその側近をめぐる話である。そこには女性の駆け引きと同性愛がある。
 イギリスは新大陸の植民地を巡りフランスと戦争状態にあった。戦費は膨らみ重税を市民に課す。その一方で、宮殿ではそうした戦争の色合いは全く感じられない。アヒル競争、贅を尽くした料理、戦争とは無縁優雅な生活。
王女アンは一説にはブランデーの飲み過ぎで肥満体質であったとされる。別名ブランデー・アンとも言われていたらしい。宮殿内を移動するにも車椅子を使っていた。彼女は6回の死産、6回の流産で、生涯に17回妊娠したが、一人の子も成人しなかった。そこで、17匹の兎を部屋で飼っている。アン王女は孤独で寂しいのだ。これも実話に基づいているからこそ面白いのだ。

 登場人物は主に3人。アン王女。そこにマールバラ公爵夫人のサラ。そして従妹のアビゲイル。アン王女を巡る二人の争いが見ものだ。
サラは女王の側近で、夫に代わりフランスとの戦争の遂行を女王に進言する。アン王女とサラは幼い頃からの親友で、そのアン王女も次第に強引なサラの姿勢にサラを疎むようになっていく。それでもサラのことを愛しく思っているのだ。その表現が素晴らしい。好きだけと憎い。憎いけど好き。そんな気持ち。切ないという思い。これはまさに恋愛感情である。同性愛。レズビアン。
そしてそこにサラの従妹であるアビゲイル。最初はサラも従順な味方だとおもていたはずである。彼女もまた女王の側近として仕えるようになっいく。そして彼女もアン王女と同性愛の仲になっていく。他方サラは、従妹のアビゲイルを自分に従うようにしようとするも、一方でアビゲイルの方はサラを蹴落とそうと策略をたてる。そのやり方は徹底している。恐ろしくも美しい。それが怖い。
 もともとアビゲイルは元は貴族だったのが没落して女中をしている。どうしても生家を再興したいと願っているのだ。そんなアビゲイルはアン女王からの愛を受けることになる。昨日の友は今日の敵。悶々とした苦しい気持ち。なんとも虚しいこの気持は何なのか。
 結局、アン王女を支えようとした2人は、本当に国のことを思い憂い、そして、女王のことを想っていたのだろうか?独占欲だったのだろうか?正義とは?愛とは?幸福とは?何のために生きるのか?人は縛られたいと思う半面、時に開放されたいとも思うのだろうか?処世術なのか?

同性愛といえば「君の名前で僕を呼んで」「ゴッズ・オウン・カントリー」「ボヘミアン・ラプソディ」…。いずれも同性は男性だった。今回の作品は女性である。身も心も捧げるとは異性も同性もない。そして、欲望も底が見えないほど深い。嫉妬もそうなんだろう。何が求めるものなのか。鑑賞を終えた後の脱力感が半端ない。考えさせられる作品である。★★★★☆

投稿者プロフィール

天雨 徹
天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」
ブログでは日々の気づきを中心に書いている。
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