「巴里祭」観ました

あの名作が帰ってきました。ルネ・クレール生誕120周年記念で「巴里祭」「リラの門」4Kデジタルリマスター版で先月から公開されてます。こんなチャンスは滅多にありません。さっそく観に行ってきました。ルネ・クレール自らが脚本をして監督をしたこの作品。フランスのバスティーユの7月14日。つまりはフランス革命記念日それが「巴里祭」です。

1933年の作品なので、なんと昭和8年。日本公開はその翌年だったようです。今見ても色褪せないという、こうした作品っていうのは凄いと思う。その頃の日本と言えば、ちょうど金融恐慌、世界恐慌で経済が混乱した時期。そして日中戦争が勃発した時期でもある。戦時体制に移行し始めた時代でもある。時代はだんだんきな臭い方向に舵を切り始めた時期。こんな時代でも映画が上映されたんだから、庶民の娯楽に対する意識というのはまだまだ捨てたものじゃない。
一方、フランスでは、ちょうどお隣の国、ドイツでナチスが独裁政権となり、アドルフ・ヒトラーがベルサイユ条約を破棄。ドイツが再軍備を宣言した時代でもある。こんな時代に作った映画かと思うと、やっぱりフランスは凄い。こうした映画をつくるパワー、魂というのが伝わります。お隣では軍備拡張、そんな時に、映画を作っているんだから。どちらの意味でもやっぱりフランスという国はすごい国です。

この作品を見てハラハラとか、ドキドキすることはないですね。でも、なんとも言えない、ほのぼのとする、心がホッコリする、そんな作品ではあります。
タクシードライバー同士の小競り合いや、酔っぱらいの紳士の振る舞いなど、滑稽で思わず笑いがこみ上げる。近所のおばちゃんも、今でもそんなおあちゃん「いるいる」っていう感覚だ。噂話や野次馬根性というのは、相変わらず古今東西変わらないのなのだろうか。そして、強盗に押し入る悪党の2人組も、確かに悪いやつには違いないが、殺し合うとか傷つけ合うことはない。温かい温もりのある笑い。そして、この作品のメインである恋愛も、ほのぼのとする。
お向かい通しのアパートで、窓を開けると顔が確認できる距離の二人。タクシーの運転手のジャン。ホテルで花を売る娘のアンナ。互いに日から合う二人の仕草がほっこりする。洗練された歴史ある都市というのは、雨が似合う。次回会うといった約束は、反故になることが多い。そうしたすれ違いから、互いの溝が深まっていく。今も昔も変わらない恋愛関係のもつれ。でも、その溝もまた偶然という思いがけない出来事で救われることもあるのだ。

確かに男女のすれ違いは、時の悪戯だ。多少の紆余曲折はあるものの、最後は「あー良かったね」と安堵するそうした作品である。「ROMA/ローマ」や「COLD WAR あの歌、2つの心」とは全く違う。無常を感じさせない、暖かさも時には必要かも知れません。やっぱり、モーリス・ジョベールの名曲を聞きたくなった。★★★☆☆