「ワイルドライフ」観ました

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この作品は小説の映画化のようで、時代は1960年代。3人家族の一件平凡で、どこにでもありそうな家庭のお話。だからこそ、ぞっとするくらい怖い。というか、現実味がある。
多感な時期の14歳の息子。その目線から両親の別離を見ていく。まさに家族崩壊。いや、壊れていても繋がっている…そんなモヤモヤ感がいっぱいの作品です。

おそらく離別の原因は(私の偏見でもあるが)父だと思う。何といっても、超わがままな少しプライドがある父。そして家庭で支えようとする頑張っている母。14歳のジョーは、そんな仲良しの父母とともに、それは、それは、本当に穏やかな誰が見ても良い家庭だと思うような平凡だけど慎ましい生活をしていたのだ。

ところが、ある日、父が失業してしまう。解雇されてしまうのだ。
仕事にちょっとプライドがあるのか、転職も2回め。そしてまた失業。そして彼が次に選んだ職業とは、ほとんどボランティアに近い…「俺は山火事の消化活動に出かけるんだ!社会活動に行くんだ!」と言い出したのだ。それを母は「現実逃避」となじる。ごもっとも。とも思う。何もこんな経済的に困っている中、わざわざ選択することはない。母が父を罵倒する。「現実逃避」は、マトを得ていると思う。そして、母は職を探さざるを得ない状況になり、外へ化粧をして出ることも多くなった母。そして息子のジョーも父に進められたアメフトをやめて写真館でバイトをすることになる。
失業したうえ自分勝手な行動をとる父、その行動に嫌気を指し、結局母が浮気をする。そして離婚。新しい道をあるき始める。壊れた家族は元には戻らないまでも、双方の気持ちがわかる14歳の息子の切ない気持ちが凄くあらわれている。夫婦も夫婦で本当は、心は通じ合っているもにもかかわらず、感情に任せて「許せない」と思う歯車は反対方向に動き出し、もう誰もが止めることができない状態へと進展していくのだ。そして、なすすべもなく壊れていく。その様子を見つめるしかない息子のジョー。母の姿を一人の女性として捉える14歳の息子の視線。戸惑いと嫌悪感。
不器用なのか変なプライドが邪魔するのか、父も父でもっと、なんとかならなにのかなぁ?子どもじゃないんだから…。と思わず感じてしまう。とっても残念な父。息子としては両親を見て気持ちはわかるが、何ともやり切れない気持ちでいっぱいになったんだろうと思う。そうした息子の気持ち、心の揺れ具合が上手く作品に表現されている。結局は両親ともに大人でありながら子どの状態から抜け出せない、そんな状況なのだ。このままでは納得できないといった気持ち。両親の気持ちはわかる。そんな息子もやがて大人になって、その判っていても納得するしか無い状況、そんな気持ち。なんとも切ない優しい気持ちになっていく。
おとなしくて穏やかな息子が、やがて自立し、しっかりしていく姿。なんともモヤモヤ感が残る現実感を味わう作品だった。★★★☆☆

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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