この作品は今年4月、中国に帰国した地元の大学の留学生から教えてもらいました。さっそく読みました。スケールの大きさ、そして壮大な内容に、この構成の素晴らしさ。驚きました。昔むかし、小松左京や筒井康隆の小説を読みふけった若い頃を思い出します。新鮮な気持ちになりました。だからこそ一気読みできたのかも知れませんね。
著者は中国で累計2千万部をこえるミリオンセラー作家の劉慈欣。はじめはタイトルの「三体」とは何のことなのか?と思いましたが、読んでいるうちに3つというキーワードが浮かびます。「そうか!!」古典力学の三体問題。質点の力学。大学1年でやったかもね。(笑)相互作用だったか。2つなら解が求まるが3つ以上になると難解となる。この三体が星もまた文明も3つある。だからもっと難解。そんな発想が浮かぶ著者はもっと凄い。
日頃から偶然も必然かも知れないとは思ってはいるが、生きていること。生命が宿っている惑星というのは、奇跡に近い。そしてそんな人類がずっと存続し続けているも超奇跡なんだ。
読みはじめて最初の取っ掛かりは、「文化大革命」の描写。これは「文化大革命」の悲惨な出来事を綴った小説なのかな?あるいは近代中国の歴史小説なのかな?そんな想いで読み始めました。SFとは聴いていたので、てっきり歴史SFかと思っていました。当たらずといえでも遠からずではありますが、でも全然違う。
科学者が次々と自殺していく。実は狙われていたのだ。そしてカウントダウンの数字が宇宙に見えるという現象だったり、奇想天外ではあるが、そうでもない。なにやら科学的知見が臭ったりする。こんなストーリーを創造するなんて、著者は只者ではない。
これは必ず映画化されると思う。そう確信できる作品である。「三体」のVRゲーム。いい加減なSFには飽き飽きするけど、これだけしっかりと登場人物が描写されていると、ついつい引き込まれてしまう。
冒頭の文化大革命の描写が強烈すぎて、さすがに、その文革の思想や行動は未だに理解できないが、その当時のリアルな表現に引き寄せられた。「4人組」のことをちょっとだけ思い出した。
こうしたSF小説が中国からというのも納得です。今や中国は、地球から電波が届かない月の裏側に無人探査機を着陸させる能力があるのだ。今や世界の覇権を競う経済力、軍事力、科学大国である。もちろんスーパーコンピューターも、5Gの通信技術も世界をリードしている。
主人公の葉文潔は、物理学者の父が大衆の狂気とも言えるかも知れない文革で惨殺されてしまう。数年後に怪しい軍事基地に身を寄せる。そこからの話の展開が面白すぎる。宇宙に向けて発信した電波が惑星「三体」のエイリアンに届く…。これは面白すぎる。★★★★★
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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