今からちょうど200年前、1819年にイギリス・マンチェスターで起きた「ピータールーの虐殺」が発生した。そして今からちょうど30年前には「天安門事件」が発生した。そして今年は香港の情勢も怪しい。いつの時代になっても、ありそうな出来事なのだ。2世紀前も同じ事件があったのだ。無抵抗・非武装の民衆に向けて、武力行使をして、死傷者が出るという惨事。権力を持つ側は治安維持を盾にして、無抵抗・非武装の民衆に対して、サーベルを抜いたり、戦車をはじめ銃で行使したりするものかも知れません。
2世紀前に発生した「ピータールーの虐殺」を描いた本作品は、マンチェスターのセント・ピーターズ・フィールドで発生した無抵抗への民衆への弾圧事件のことである。当時、広場で選挙法改正を求めて集会を開いていた群衆に対して、資本家が召集した義勇軍、そして政府の正規軍、双方の騎兵隊が突入し、多数の死傷者が出る惨事となった事件のことだ。
作品の冒頭で、1819年のナポレオン戦争の情景。爪痕が残る。そして戦争後の市民生活が描かれる。失業率が高い。仕事がない。戦争によって疲弊したイギリス経済。そこにさらに重税を課せられ苦しむ市民。当時の穀物法という高税率などの様子もよく表現されている。その一方で至福を肥やす資本家、王族や貴族の姿。外の苦労など、全く関係のない生活。
結局、多くの死傷者を出す犠牲を出さないと、民主化は進まないのだろうか。この虐殺で、マンチェスター・ガーディアンが創刊されるきっかけともなったのだ。ペンは剣より強いかも知れないが、犠牲と時間が伴うということかも知れないのだ。
本作品は、先週観た「戦争と人間」とは違い、人間の内面とか当時の生活とか深く追求するものでもなく、客観的に、歴史的事実を描いている。ヒーローもヒロインもいない。そして単に資本家と労働者側の対立だけでなく、女性運動にジャーナリスト、活動家などなど複雑に絡み合う。中流階級や知識階級、末端に労働者階級、単に資本対労働者といった、社会主義闘争といった単純な構図ではないのだ。
そんな複雑な構図でも、結局は自身の正当性を振りかざし、そして大義を重んじる。それは本当に、こじつけなんだろうか。いつの時代でも同じことを繰り返すものかも知れません。相手のスキを見つけて付け入る点があれば、逮捕する。わが国でも戦時中にあった治安維持法のあった時代、憲兵隊に逮捕されるジャーナリストと変わりない。参政権も長い時代で得た市民の権利である。たしかに欧州のことで、わが国ではないにせよ、こうした先人の時代年輪から得た権利。考えさせられる。★★☆☆☆
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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