奥が深い…イギリス階級社会にみる、偏見と心の葛藤「ハワーズ・エンド」

ハワーズ・エンド

出会いとは、時に悲しい結末を生む。
ご縁という偶然の出会い。それが運命を左右する。
でも、それが人生なのだ。

階級社会の中で、人間の弱さ、ずるさ、優しさ…
すべてが凝縮されている作品だ。
太宰治小説、斜陽や人間失格が頭をよぎる。
人はそれぞれ実は隠された秘密があったり、
小心やずる賢さがあったり…。

ハワーズ・エンドとは、郊外の別荘の名前である。
その別荘は一体誰のものになるのか。

1992年、1910年の同名小説を元に作られた2時間半に渡る長編作品だ。
それが2019年に4Kデジタル・リマスター版となって復活。
映画館で公開され、観る機会に恵まれました。

20世紀初頭の英国の階級関係の物語だ。
この作品に描かれている時代。
それは、ガス燈や汽車、自動車、電報、馬車などが入り交じる時代。
その時代は、第1次世界大戦が臭ってくる時代。
そして成りあがりの富裕層。
その労働力は地方からの低賃金労働者。
富裕層と労働者。貧富の格差が拡大した時代だ。

イギリスの風景というのは島国でありながら、
広々とした田園風景が広がる、
そしてロンドンに伝統的な建築がいい。鮮やかで美しい。

作品の中で、中流階級の家庭が描かれています。
その豪華な調度品の数々が目を見張ります。
そして午後の紅茶、中国茶でした。
優雅に過ぎていく時間。
忠実な執事やメイド。
そんな生活があるんだ。

でも、一見優雅そうに見えるイギリス上流・中流社会。
住む世界の違う人には冷たい。
差別や特権意識の存在。

そんな時代の中流階級と実業家の両家の奇妙な関係を描いている。

この作品に登場する実業家は、仕事にしか興味がない。
成金は所詮成金なんだ。
おそらく譜代の貴族から観ると、そんな目で見られていたと思う。

もう一方の中流階級家庭の姉妹。姉は自分の名刺を持ったキャリア。
最先端を行く婦人である。妹は音楽、文学、絵画を愛するインテリ。

そこに下層階級、いわゆる一般市民の男女が交わる。

オススメ度:★★★☆☆
理由:アンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンの演技が凄い。
あの時代の忠実な街並み、郊外の風景、室内の調度品。あの映像の美しさ。
そして、人の心の動き。さすがはアカデミー賞9部門ノミネート作品だ。

知的な庶民に思わず共感してしまう。
失業後の庶民の生活状態が実によく描かれている。
失業…。必死にもがいても這い上がれない様子は、
雇われ身としては、ドキッとさせられる。

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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