是枝監督の作品「真実」には、やはり事実より真実には愛が溢れている

真実

この短い限られた時間の中で作品に落とし込む技術というのは
まさに映画の醍醐味。
事実は客観的に物事を捉えたもの。
真実は主観的な立場で捉えたものだ。
起きた事象は一つでも、
違った人の立場からモノを見ると違って見える。
娘から見た母。母の自分から見た自分。
あるいは夫から、孫娘から。
「事実」というのは「誰から見ても変わらない、
実際に起きた出来事」であるし、「真実」はその「事実」に対して、
いろいろな人それぞれ立場、ものの見方や解釈があり、
多面性を持っているのだと、あらためて感じた次第。

カトリーヌ・ドヌーヴ演じるファビエンヌは、
フランス映画スター。
彼女が自伝本を出版する。
そのお祝いに駆けつけた一人娘。
この一人娘は絶対に母のことが嫌いなんだろう。(笑)
同じ女優だった叔母さんが大好きだった娘。
序盤戦から、そんな関係が見え隠れしてくる。
そして、母の自伝本の内容から、
さまざま問題が湧いてくるのだ。
というのも、その自伝本というのは事実に基づいて、
記載されていないからだ。

でも、事実ではないが真実かも知れません。
それがこの作品のキーワードなんだろう。

作品はフランスの日常の情景。
そして街並み。季節もいい。
母娘の愛憎。それでいて、友達のような感覚。
親近感と共感が沸いてきます。
何よりも、母も一人娘が、その一人娘にも娘が…。
どちらも子を持った母でもある。

どこにでもあるような悩み。だからこそ、共感するのだろう。
そしてこうした日常の何気ない感情や雰囲気を
作品の中で描ききるという点に注目したい。

誤解やすれ違い、
それがまるでパズルをはめ込むように、次々に見えてくる。

まさにそれこそが真実なのだ。

あの時こうしたのは実は、こうした意図があった。
この時、こう思ったから、こんなことになった。
それが判った時、真実はっきりとわかってくる。

娘って親子でもあるし、女友達でもあるし、
娘に子供が生まれた時点で母と母同士にもなる。
そうした不思議な関係。
加えて夫との関係、女優とマネージャー、
さまざまな人間模様。絆。

オススメ度:★★★☆☆
理由:一流大女優の家庭というところは、
一般の家庭ではないかも知れませんが、
それ以外は極普通の家族にでもありそうなすれ違い、
母娘、夫婦、上司部下など。
嫉妬もあれば愛しさもあろう。
人はだれでも天の邪鬼の一面を持っているのかも知れない。
私は持っている。と思う人は観たほうがいい。
事実と真実に出会えるチャンスかも知れません。

投稿者プロフィール

アバター画像
天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
詳細プロフィールはこちら。
PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました