これぞ映画館でしか味わえない感覚!数々の賞に輝いた作品・上映時間なんと4時間!「象は静かに座っている」

本作品には、
お互いを傷つけ合って生きている、
現代中国の“生きづらさ”が表現されているという。
まさに暴力、口論、誹謗中傷のシーンオンパレードで
そこには笑顔はない。
全編にわたって、すべてが他人のせい。
不平不満で埋め尽くされている。

唯一の希望は、「象」なんだ。
日はまた昇る。希望の象。

主人公ブーをはじめ、すべての人が
士気を無くしたくなるような環境の下、
どんどんモチベーションが下がり堕落していく有り様。
空っぽになった時には、人はどのような解決を探るのか。

虐待や不平等な社会。
正直者が馬鹿を見る社会でどのように生きていくのか。
反抗する気力もなくなったら、何を頼りに生きていくのか。
とても考えさせられるディープな作品です。

河北省の地方都市
それぞれ別の境遇にいる家庭をそれぞれ見せながら、
訴えるものがある。240分近くかけて描いた長作品。

実に惜しい人財のブー。
クラスメイトでいじめをしていた実業家の
馬鹿息子は(ゴミ)クズ。もちろん両親もゴミ。
その兄さんも確かにゴミではあるが、
わずかに光があるように見えた。
先生もまたゴミのような存在。
いじめられていたクラスメイトもまたゴミ。
女学生も、そしてその母親もゴミ。
主人公のブーの父親もまたゴミだ。みんなゴミ。

近所の老人ジンは可哀想な存在、自分たちの生活のために
父を老人ホームに無理やり入居させようとする娘夫婦もゴミ。

最低の地域に住むと地域丸ごと最低になるものなのか。
全てがゴミ箱のような地域社会。

2300キロ離れた満州里市の動物園・サーカスには、
1日中ただ座り続けている奇妙な象がいる。
満州里市とは中ロ国境の内モンゴル自治区だ。
何をされても。一日中、静かに座っているという象がいる。
それだけが希望の光。この象こそ光の象徴なのだ。

老朽劣化したアパート、親のDV、学歴や年収の格差。
老齢化問題、いじめ。まさに世界標準の課題でもある。
それこそ、みんなが不幸。居場所がないんだから。
そこから抜け出す方法?その彼から選択した術は
余りにも拙速。

なんで、こんなことに。
もがき苦しむ彼らが、何とかならないかなぁと、
観ていて思ってしまう。同情すらしてしまう。
見終わったと同時に溜息が出てしまう、そんな作品だ。

カラー映像でありながらモノクロのような映像。
古ぼけた街並みを印象づけるため、
ぼけた感じがまたいい味がある。
観客の目線と同じなのか、
まるでスクリーンの中にいるような感覚もいい。
これは映画館でしか味わえない感覚だ。

オススメ度:★★★★★
理由:ディープな作品が好きな人
思いっきり沈みたい人凹みたい人には超オススメ。
メルヘンやロマンティックなシーンの欠片もない作品。
それでいて、
人間の奥の深い心の部分をえぐりだすような作品。
非現実的ではなくて、とてもリアルでよく創られています。
不幸が不幸を呼ネガティブスパイラルにハマりたい人向けです。

象2

投稿者プロフィール

天雨 徹
天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」
ブログでは日々の気づきを中心に書いている。
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