
これは凄い作品だった。いや、トンデモナイ作品。
こういったいい作品を観ると、
対価として支払うのは同じなのに…
って思ってしまう作品の数々に時には、
「観る時間の無駄」を感じざるを得ないこともある。
あの、まあまあの「残念感」が半端ないと感じてしまうのだ。
だからこそ、この作品が、それを感じさせるほど、
ホントいい作品だと思う。
面白すぎる。
凄すぎる。

不思議なくらいに作品自体に
登場人物は少ない。
それでいて、トンデモナイ工夫がなされている。
これぞ、映画。
笑えるけど、ホント、笑えるけど、笑えない現実。
まさに「ブラック・コメディ」となっている。
比べては良くないけど、
「万引き家族」+「カメラを止めるな」の数倍のオススメ。
それでいて、あの長い名作「象は静かに座っている」に描かれている
なんとも言えない、頑張ってもどうにもならない悲壮感。
お笑いから始まり、この限られた時間でこれだけの中身の濃い内容。
人間関係と感情をえぐり出す凄さ。

オススメ度:★★★★★
理由:格差社会、貧富の差。人の価値、幸福と裕福の違い。
すべてがこの作品に凝縮されている。
「象は静かに座っている」で訴えていることにも近い。
(# だから、青海省でも「検閲」で上映中止になったんだろうと思う。)
あんな限られた時間に表現できるこの作品はホントに素晴らしい。
あの内容を入れようとすれば、
「象は…」と同じぐらいになっても不思議ではない。
格差をあそこまで、面白可笑しく、
しかもそれが最後には笑えない内容に作るとは。
貧しさは、表面をいくら取り作っても、たとえ高価な香水を降っても、
ジメジメとした、あの独特の匂いが染み付いているのか。
綿密な計画は結局は、
人のちょっとした『優しさ』によって、
計画通りに進まずに破綻するとか。
その悲劇は、結局はトンデモナイ最悪な結果をもたらす。
頑張っても、一発大逆転なんて、そうそうあるはずも無く、
最後はうまくイケた…というのは、眠っている「夢の世界」
だったりもする。
それでも人は、そういった世界に身を寄せる家族は、
それを、裕福を目標に信じて生きていくしかないのか。
それは本当に幸福でもない選択なのかも知れないのに。
底辺から這い上がるためには、生きている時間すら、
食いつぶす必要があるのか。
貧乏の中でも、
本当に、その中で真面目に、まあ、真剣では無いにせよ、
相手を多少思いやり、まあまあ損して生きている…
そんな浪人生に訪れたバイト。
嘘が嘘を重ね、それがドンドン膨らんで、
裕福は必ずしも幸福ではないかも知れない。世間知らず。
「ゆうふく」と「こうふく」は
たった一字の一音の違い。
「ゆ」と「こ」しか違わないが、
「うさぎ」と「うなぎ」ぐらい違うんだ。
はじめは笑いながら作品を観ていたが、笑えない現実。
笑えないのは、彼らとは確かに貧富の差はないにせよ、
『狭い了見』という考えで言えば、
笑ってられないと感じたりする。
まあまあ残念な家族である。というか最後は…。
ネタバレは避けたいのでコレ以上は言えない。
こんなに同じ料金で差があるというのは、
やっぱり映画という作品は、本当に奥が深い。
本作品は、おそらく単に怖がらせるホラー映画よりも、
凄いホラーでもある。
貧富の差を目の当たりにしてくれる作品でもある。
これは一体どんなジャンルの作品なんだろうか。
面白さで言えば、「カメ止め」と比較されるかも知れないし、
底辺の生活の社会風刺で言えば、「万引き家族」。
政治体制・社会体制でいえば、「象は静かに座っている」。
とにかく、凄かった。

投稿者プロフィール

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人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」
ブログでは日々の気づきを中心に書いている。
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