オススメ度:★★★☆☆(3.5)
理由:アメリカ史を知るうえで,
本作品から学ぶことは多い.
勇気とか恐怖心の克服とか,
時には人間の弱さとかだ.
しかし,映画作品には,
心が揺れ動くような,あるいは,
胸が締め付けられるような,
泣けるような感情移入,
共感があって欲しい.
別に悲惨さを表現した方がよいと,
言っているわけではない.
心に訴える人間性が欲しいように思う.
偉大な歴史を学ぶうえで,また,
未解決な差別や
偏見から生まれる奴隷制について,
戦うことが必要だということを
示すうえで,
こうした作品を
今後も生まれることを期待したい.
2020年の新20米ドル紙幣の図柄に
採用されることが決まった.
本作品の主役「ハリエット・タブマン」だ.
米紙幣にアフリカ系米国人の肖像が
使用されるのは初めてのことだ.
実話に基づく作品はやはり重みが違う.
この作品を観れば,
恐らく「ハリエット・タブマン」のことを
調べてみたくなる.
彼女「ハリエット・タブマン」
(1820年 – 1913年)は,
米国メリーランド州の奴隷だった.
1849年に奴隷生活から脱走した彼女は,
後に奴隷解放運動家,女性解放運動家として
活躍する.
黒人奴隷を密かに逃がした地下鉄道という組織.
その女性指導者で「女モーセ」とか
「黒人のモーセ」と呼ばれたていたという.
モーセといえば,ユダヤ人をエジプトの奴隷から
解放した預言者モーセ.
折しも,6/20は,奴隷解放記念日だ.
そして,米国で女性参政権が
与えられてからちょうど100年(2020年)となる.
そして,彼女が亡くなってから
100年以上経ても,未だ差別は無くなっていない.
ハリエットは奴隷時期には
ミンティと呼ばれていた.
頭部に受けた殴打は後遺症を残したのも
本当のことらしい.
それが原因でスピリチュアルな現象が,
本当に起こったかどうかは委細不明ではある.
少し誇張も感じられるが,
あれはあれでその脚本は良かったと思う.
あれだけ南北を往復して,
すべて成功したことは神業だからだ.
内容は,言わば「英雄伝」といった枠に
ハマった内容ではあるものの,
実話を知るうえで観て損しない作品である.
人を家畜同然に売買の対象する奴隷制度.
彼ら彼女らの人生とはまさに
“自由か死”のどちらかだ.
奴隷制度の黒人は,白人から観れば,
財産そのものだ.
多少飛躍や誇張があるにせよ,
覚悟や勇気は半端ない.
そこには性差は微塵も感じられない.
強い女性だ.
むしろ男性の方が,
劣後しているようにも
見えなくもない.
奴隷制度と人種差別は
別モノではあるものの,
密接に相互作用を及ぼしていると思う.
暴力やフェミニズム.
歴史を知るうえで学べた
作品ではあるものの,
感情移入の点では,いま一歩である.
恐怖心を克服するのは
自身であるが,
ひとつ間違えば死と隣合わせ.
その恐怖.それを考えるとグッとくる.
映画作品としての批評よりも,
歴史の一端を知るという点で必要な作品だ.
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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