作品にフェミニストやジェンダーをみた「罪と女王」

罪と女王

オススメ度:★★★★☆(3.8)
理由:人は心を持っている.
その絶妙な変化を
この映像を通じて表現するのは凄い.
頭の整理ができていないが,
中々興味深かい内容の作品だ.
自分の心,感情が揺さぶれていく感覚だ.

北欧映画らしい美しい映像と音楽.
そこで繰り広げられる男女関係.
さすが,デンマークからアカデミー賞への
代表作品に選ばれた作品だけのことはある.

アンネは弁護士で,女性被害者を救済する立場だ.
性暴力や虐待を受けた未成年を保護したり,
擁護する立場.その激しい気性は
逆に信頼に通ずるものがる.
有能で被害者にとても熱心だ.
他方,夫のペーターは医師で,
彼女との間には双子の娘がいる.
その夫と前妻との間には17歳の
問題児の息子がいる.
彼は学校を退学になった.
そんなある日,
平和な家庭にその問題児がやってきた….

地位も名誉もある女性弁護士アンネ.
夫は医師.2人の娘.何不自由のない環境.

疑い.事実,真実,真意….
居候の少年が自宅に招き入れたガールフレンド.
彼と彼女の性交に興奮するアンネ..

ちょっとした勘違い,
いや,やっぱり過ちは利息を生む.

正義とは何をもってして正義なのか.
真実と事実が違うように,
それとこれとは別…
ということは,
どうやら日常茶飯事である.

あの臨場感あふれ,情事があったことを
隠し通す.大嘘をつくアンネ.
そして真実を身を以て証明したい少年に対して,
夫婦が互いに知っていながら,
敢えてその話には触れない…
ある種大人の対応.

あまりの性の表現の映像のリアルさ.
それでいて,俗に言うアダルトビデオのような
肉体的な表現ではなく,心の描写だ.

この彼女の行動は罪なのだろうか.

好きということに我慢しない.
その生き方に,共感を覚える.

でも,今の生活が壊れるかも…
そうと感じた時,急遽,
証拠を消してまで保身に走る.
その気持ち.そこにも共感を覚える.

小心者だけど,好きは我慢できない.

結局は,夢中になるのは,
その人に魅力があるからに違いない.

人は守りに入ると,
凄く好きな人に対しても
残酷なことができるものかも知れません.

禁断の愛.

少年を誘惑する.
事実を覆すアンネが弁護士というだけに
凄みを感じる.

加害者が被害者になりすまし,
それを押し通す.
まさに理不尽.
少年は被害者でもある.
アンネに対して怒りすら覚える.
大人の事情といえば,それまでだ.

嘘に嘘で硬め,
ここまでいくと救いようがない.
セクハラ・パワハラは権力を
もった立場を利用して弱者を至らしめる.
普通は強い男性から女性に対するものだが,
この作品は女性が少年に対してだ.

だが少年は拒んではない.

すると
誰が誰に対して,何をしたのか.
責任の所在が曖昧になる.
ジェンダーやフェミニズムの勉強には,
うってつけの作品だ.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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