お姫様は成されるがママ.一人では何もできないということか「グッド・ワイフ」

グッド・ワイフ

オススメ度:★★★☆☆(3.0)
理由:皮肉たっぷり社会風刺が存分に入っている作品だ.
主人公のソフィアを通じて,生き方について学ぶことができる.
彼女らの普段の価値観,ヒエラルキー,見栄と偏見が
垣間見えるものの,彼女らの日常が流れるため若干,
観客が退屈になることもあるかと思うが,考えさせられる作品.

80年代のメキシコシティ.
高級住宅街の大豪邸.
セレブを満喫し,まるでその集団のリーダのように
振る舞うソフィア.
会社経営の夫と3人の子どもたちと
贅沢な何不自由のない暮らし.

それが一転する.

1982年8月に発生した
メキシコの「デフォルト宣言」
あの時代…80年代当時,
それまでドル建て・安い変動金利で借りた資金,
その金が、レーガノミックスで高金利の
ドル高で変動利付債務のお陰で返済負担が重くなった。
そこにメキシコは石油の輸出に依存していたから,
一次産品価格の暴落で国が破産した事件.
債務危機,いわゆる逆オイルショックだ.
この経済危機で,こうした富裕層は倒産が相次ぐ.

贅沢三昧の暮らしぶりも徐々に傾く.
洗練されたエレガントな生活.
セレブの女王のような生活も傾き始める.

お行儀の良さ,磨かれたセレブが没落すると,
そういう人たちは,どのように
落ちぶれていくのか.

華やかさを競い合っていたセレブ集団.
その裏で陰口.建前.
彼女らの生き方を通じて,
そうしたセレブの一般的な価値観や人生観を学べる.
痛烈な社会風刺といった内容の作品だ.

完璧な世界とは実に儚くて脆い.
結局は他力本願が作り出した
虚像に過ぎないからであろう.

クレジットカードが使えない.
小切手を切っても現金にできない.
個人の資産が差し押さえになる.
使用人に給料も払えない.
そんな状況でも,それでもなお
セレブな生活を辞めようとはしないソフィア.

全ての財産を失った時,
彼女はどのように生きていくのか.
突きつけられた現実を,
どのように認識して,どう振る舞っていくか.

そんな彼女も本当はみんなに見透かされている.
自分だけセレブ,
他人は既に彼女が貧乏であることを知っている.
それにはじめて気づくときの自分の気持ち.

ラストの10分が見せ場だ.

ボロはきてても,心は錦♪とは,
いかないのか.ここまでやり通すなら,
初心貫徹.清く生きてみたいと感じた.
ふと武士道を思い出した次第.

確かに女性経営者,フェミニズム,
男女平等の社会の中で,
こうした古い価値観で生きている
貴族生活を謳歌した夫人も一方では存在する.

結局は,こうしたセレブとは旦那の腰掛けで,
他力本願.一人では何も出来ずに「成されるがまま」
ということを皮肉たっぷりにスクリーンに見せてくれる.
カゴの中のカナリヤ.ガラス細工のようなものだ.

人はどういう生き方も選択できる.
選択の自由が与えられている.

見栄と虚栄.
そうしてみると,ヒエラルキーの一番下から
這い上がってきた生粋のセレブでなく,
「なんちゃってセレブ」の方が,
生きることについては逞しい.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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