生と死,その先へ「花のあとさきムツばあさんの歩いた道」

花のあとさき

オススメ度:★★★☆(3.5)
心が洗われました。
歳のとり方を考えるうえで
とても参考になります.
限界集落から
人が居なくなることを前提に,
山を神様に還す行為.
畑に花を植えていく.
その崇高さに魂が洗われる.
自身の死を意識して何をすべきか.
明日があるという保証がないのに,
何のために働くのか.
そんな問いかけを示唆した作品だ.

本作はNHKのドキュメンタリー
「秩父山中 花のあとさき」の映画化です.
昔は蚕,木炭,そして杉の植林…なのどで
栄えていた山あいの集落.
かつては100人以上が住んでいたという.
過疎化が進み,集落は衰退.
これまで150年間守り続けた畑を
自分達の代で山に還すのだという.

長年世話になった畑が
荒れ果てていくのが申し訳ないという心.
畑を山に還す.そのためにした行動とは…
畑に花を植え続けるということだった.

その夫婦を中心に
集落に住んでいる人の営みを長年取材した内容が
ギュッと凝縮されている作品だ.

ムツ婆さんとは,
26歳で隣村から嫁いた小林ムツさんのことだ.

舞台は,埼玉県秩父市吉田町太田部楢尾.
限界集落である.人が住まないからこそ,
その風景は美しいのか.

衰退した集落に留まれないので,
当然息子や娘は,町へと職を探すことになる.

地方分権といいながらも,
都市に集中するのは,
避けることができない流れでもある.

作品に登場する方は既に故人.
だからこそ,その一言一言が重く,
まずで遺言のように聞こえる.
「言霊」なのだ.

これまでの半生をどのように
暮らしたのかがよく分かる.
まさに集落の方が,
住んだ足跡を見るような作品.
取材班が2002年から2020年まで,
18年間も置い続けただけに,
その作品は重みがある.
今は全て廃墟….
限界集落が限界を迎えて,無となったのだ.

肉体は滅びても魂は今も生きている…
そんな気さえする.

花となって今もなお生き続けているのだ.
自身の終焉を迎えるに当たり何をすべきか.
魂が喜ぶことをするしかない.

守っていたものが,
やがて衰退し荒れ果てていくのを
見たくはないだろうが,
仕方のないことだ.
やりきれない哀愁が漂う.

一言一言に重みを感じる.
時折その言葉の重さに涙してしまう.
三次元の世界,物理的な発展を遂げる中,
あちらの世界,魂…
それはまさに,
われわれ現代人が失ってしまったもの.

次元が違うのだ.

本人の映像も踏まえて
映し出されているので,
その懐の大きさを
感じずにはいられません。

人生はあっという間.
まさに諸行無常なのだ.

四季は様々な表情をみせてくれる.
既に亡くなったムツ婆さんも,
まるで今でも
生きているかのように
あたかも無かったように時は流れていく.
自然が恵みをもたらし,
自然とともに生きることが大事なんだ.

投稿者プロフィール

天雨 徹
天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」
ブログでは日々の気づきを中心に書いている。
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