オススメ度:★★★☆☆(3.2)
理由:単なるサクセスストーリーと言った面とは別に,
「フランスは人権の国ですか?
それとも人権を宣言しただけの国ですか?」
難民移民問題としても,
そして運命についても考えさせられる作品.
つい偏見で見てしまう,
そうした自分とも対峙することもできる
良い作品でした.
実話に基づく作品は,王道のように
エンドロールで本人の画像が映し出される.
それもこうした作品の魅力だ.
成功の決め手は,本人の才能はもちろん,
やっぱり周囲の人.友情だ.
決定的に違うのはソコだと思う.
チェスで世界チャンピオンになった
バングラディッシュからの
難民の少年ファヒム.
父子で家族を残してパリにやってきた.
当時のバングラデシュは政治も不安定.
あちらこちらでデモがあったようだ.
難民申請が通らない.
結局は,難民センターを追い出され路上生活に.
父と離れたくない気持ち,
でもチェスをしたい気持ち.
フランスはやっぱり移民の国で,
他国の移民に対して寛大な国のように思える.
チェスのことを全く知らなくても,
楽しめる作品だ.
チェスの試合の臨場感も
十分伝わる作品となっている.
バングラディッシュから
生きるか死ぬか
本当に明日をも知れない状態から,
抜け出して,
なんとかフランス・パリまでたどりつた.
路上での花売り.一瞬先は闇.
偶然が犯罪に発展しかねない状況だ.
運が良かったといえばそれまでだが,
やっぱり人間力だと思う.
人種問題.言語の問題.文化の違い.
時間のルールなど.様々な問題があった.
言葉は子どもには,交友関係で入るものだ.
特にチェスを通じて心が通じあうんだろう.
その点大人は自ら心を開かないから,
語彙の不足から言語習得が難しいんだろうと,
作品を通じて感じた次第.
フランスの生活に馴染んでいく子どもと対象的な父.
父親はいい人なんだけど,言葉を覚えられと,
ますます孤立していくところがなんとも哀しい.
それは偶然も必然なのか.
そういう人はやはり運にも
恵まれるんだろうと思う.
偶然みつけたチェスの教室.
そしてその時に出会った先生や生徒.
大会の参加資格に例外が認められたこと.
首相の質問コーナに不法滞在の問題が
採用されたこと.
周囲の特に教室の先生と事務員.
そこに通う生徒も個性的で面白いそして素直.
その純粋さに惹かれる.やっぱり素直が一番なんだ.
今更ながらあらためて感じたことでもある.
民族主義だの排外主義が蔓延る時代に,
心温まるこうした作品に触れられて良かった.
これらどれも偶然なんだろうか.
実話だけに,これは脚本の出来不出来かもしれない.
作品としはもう少し濃い内容にもできそうな素材なので,
少し残念な作りではある.
しかし,それでも結果だけを淡々と進行していっても,
それでも刺さってくる.
様々な素材がありふれていて,
それを全部限られた時間の中に収めようとした作品でもある.
それでもやっぱり実話に基づく作品は,
ホンモノという感動がある.
逆の見方をすれば,
それはそれで,判りやすい作品だ.
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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