井上ひさし戯曲の映画化,宮沢りえと原田芳雄が素晴らしい「父と暮せば」

父と暮せば

オススメ度:★★★★☆(3.8)
理由:苦悩のうちに亡くなった身内.
そして親友を思う気持ち.
自分だけが幸せになっていいのか?
と悩む娘の葛藤.見ていて切なくなる.
今のように,何不自由ない時代を
生きているからこそ,そうした気持ちを感じる.
そして,一日一日を大切に過ごしたいと思う.
亡くなってから10年.
井上ひさしさんは生き続けている.
戦後75年の節目だからこそ,
こうした作品が劇場で見られ良かった.
言葉というのは,思いが広がる.
素朴ながら見て損はない作品.
是非劇場でみたい.

井上ひさしの戯曲,舞台劇・二人芝居を
映画作品にしたもの.
だからこそ,その発せられる一語一語が,
言葉が重い.あの優しい広島弁と対象的に
重いのだ.

娘役の宮沢りえと
その父親役の原田芳雄がいい.
素晴らしい演技だ.

黒木一夫の 『戦争のレクイエム』の
3部作「明日(1988)」と「1945年の少年の夏(2002)」
それに続く3作目の作品.

1948年,広島の原爆の生存者で生き残った娘と
原爆で亡くなった父親.
その父親が亡霊となって現れる.

父と娘の会話が中心にも関わらず,
その戦争,原爆の悲惨さや傷跡,
胸が絞めつけられる思い…
それが,ひしひしと伝わる.

自分だけが助かった.
生き残ってしまった.
亡くなった父親や
友達に申し訳ないという気持ちから,
自分だけが「幸せ」になれない,
そう思う娘.

一方の父親は,
そうした娘の思いは「間違っている」と指摘し,
娘の応援のために亡霊となって助ける.

3.11の東北震災の津波で,
祖母を途中で置いて,
山頂に逃げた娘の話を思い出す.

儚い命は,
宮沢賢治の作品とも重なったりする.

亡くなった人だけではなく,
生き残っている人すらも
不幸にしていく戦争.

原爆瓦や体内から出てきたガラスの破片.
原爆により砕かれた破片は,
具現化して映像化しなくとも,
それだけでも,その惨たらしさが伝わる.

人は,
経験したこと,体験したこと
「真実をねじまげないで後世に伝える」
そうした使命があるかもしれない.
思い出したくないと,
ひとしれずひっそりと過ごすことは,
結果として良くはないのだ.

戦争体験は,
やはり「語り継ぐこと」が必要だと,
あらためて,この作品を通じて感じた.

生存者の多くは,おそらく,
こうした考えの人も決して
少なくはないだろう.

残された娘も苦悩,
娘を思いながら亡くなった父.
広島の一寸法師や,
父娘の「じゃんけんのシーン」は圧巻.
父が娘の彼のためにと,
すり鉢で作る雑魚味噌.食べてみたい.

投稿者プロフィール

天雨 徹
天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」
ブログでは日々の気づきを中心に書いている。
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