実話に基いた作品は多少粗々でも重みがあるもの『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』

オススメ度:★★★☆☆(3.8)
理由:ソ連に潜入するまでの経緯が
丁寧に描かれいない点はあるものの,
さすがに事実に基づいた作品は迫力がある.
国家とは何か.大義とは何か.
冒頭の豚.「豚から人へ、人から豚へ、豚から人へ」…
考えさせられる作品.
それにしても,才女役のヴァネッサ・カービーは
綺麗だ.それだけでも鑑賞する価値はあります.

1929年に米国の株暴落が端を発した世界恐慌.
そんな中で,ソビエト連邦だけが繁栄している.
それは事実なのか?
そのことに疑問を持ったイギリス人ジャーナリストの
ガレス・ジョーンズは1933年,当局の監視をすり抜け,
ソ連の食料庫・黒い大地であるウクライナに潜入した.
そこで目にした光景こそが真実だったのだ.
結果として,あの人工飢餓状態.
いわゆるホロドモールを目にしたのだった.

目撃されればその場で射殺されても
おかしくないそんな状況の中で,
世界中が見たことのない閉ざされた大地に
単独で潜入し,なんとか強制送還され
帰国できたことは奇跡だ.
そこまでして,事実を見せたいということに
ジャーナリズム魂を感じる.
そして彼の顛末も意味深である.

帰国後も,彼のペンが本当なのか.
自身にとっての誇張や解釈もあるのではないか.
語っている内に事実が彼自身によって
曲げられはしないか.
帰国後も困難が待ち受けていたに違いない.

まさに彼のペンは事実であり,真実でもある.

ここで,事実と真実の違いを整理….
事実は,本当にあった事柄で現実に存在する事柄だ.
真実とは嘘偽りのないことで,本当のことを意味する.
だから事実はひとつであるが,一方真実は複数ある.

心理には事実と真実が異なる場面もあろうが,
この場合は,客観的な出来事だから,
一致するはずだ.

モスクワの繁栄の裏には,
多くのウクライナを始め
地方の犠牲があったのだろう.
都市が農業中心の地方の犠牲の上にあるという構図.
そんな時代だった…
からなのかもしれません.
今も少しずつ改善はされているが,
都会に行かざるを得ない構図は
今もかわらないかもしれませんね.

フリージャーナリストの
ガレス・ジョーンズは,元英国首相の外交顧問で
ヒトラーにインタビューをした経験もあるという.
母親がウクライナ出身で本人はウェールズ出身だ.

英国では,世界的恐慌の中でルーブルが
値崩れしていないことから
スターリンと組むべきだと主張する声も
あがった.

ソ連に完全に飼いならされた
お雇い外国人記者やエンジニアに嫌悪感.
コロナ禍の元,適当なフェイクニュースの洪水.
今もそんなに変わらないかもしれません.
御用記者のニューヨーク・タイムズ支局長
デュランティだ.

ナチスの台頭による危機感から
英国はソ連と外交を展開していく.
それはナチスへの牽制の意味で.
世論からスターリン体制への批判を
差し控える政治判断もなされた時代.

多国の内情は確かに「内政干渉」
かもしれません.意見するな!ということは,
逆にいえば自国内で,
同じ仲間や国民に対してやましいこと.
堂々とはとてもできないこと,
表面だけ取り繕っていることがあろうかと
思います.劇場でご覧ください.

投稿者プロフィール

天雨 徹
天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」
ブログでは日々の気づきを中心に書いている。
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