実話を基にしたフィクション小説作品「ジョーンの秘密」

オススメ度:★★★☆☆(3.0)
理由:東西のパワーバランスを保つため,
「世界を均等に」「知識を均等に」
そのために原子力爆弾研究の情報を
ソ連に渡したのだと主張する.
逮捕された80代のスパイ.
老女の回想話には,実話を基にした小説だけに
迫力がある.作品としては平凡であるが,
なぜ,KGB(ソ連国家保安委員会)
へ情報提供するに至ったのか.
その過程が面白い.

実話モデルとなった実在した
メリタ・ステッドマン・ノーウッドは
実際に共産主義者の筋金入り.
メリタ・ステッドマン・ノーウッド自身は
イギリスの公務員にしてKGBの情報提供者だった.
彼女は1937年に英国非鉄金属研究協会に
正式採用されて以来1972年に退職するまで,
職務を通じて知り得た国家機密を
KGBに流し続けたのだから,
かなり脚本されて小説となっている.
いわばフィクション小説だ.

2013年のその小説を映画化したのが本作品だ.
だからフィクション部分もかなりあるかと思う.

作品では2000年5月,KGBに核開発の機密を
流していたとして,
保安局(MI5:Military Intelligence Section 5、軍情報部第5課)
に逮捕されたジョーン・スタンリー.

彼女の容疑は,半世紀以上も前の罪.
核開発の機密情報をソ連に流したという
スパイ容疑だった.

なぜ彼女は英国の仲間や家族を
裏切ってまで,KGBに情報を流したのだろうか.

平和の為の核抑止力とは東西のバランス.
片方しか持っていなければ,
方側のみ軍事優位になり,
核の行使を行う可能性がある.

そこで均衡を保つために,
東側に情報を流したのだと主張する.

国家間のパワーバランスが
崩さないためにだと主張するのだ.
各国の力を対等にするためという考え方は,
むしろ彼女の奢りではなかろうか.

世界平和のために、核開発技術の共有化すれば,
兵器としての役割を終えるとした考え方は,
果たして正しいかどうか.

技術の均衡を図るために,相手に情報を渡す.
つまりは今で言う産業スパイ.

作品を通じて,彼女は,異性の男性に
信念が揺らぎすぎのような気もする.
いくら才女でも,何か正義という確固たる信念が
なければ,やはり結果として,
良い方向には進まないようにも思えた.

誰にでも青春時代がある.
そして,良い意味でも悪い意味かどちらかではなく,
歴史上に名を残す人物にはなった.

彼女はおそらく,毎日が正しいことを
したかどうか葛藤したに違いない.

才女にして,核開発に勤める教授に恋する.
でも,ロシア人にも恋する.恋とは盲目にさせる.
そう思うと,世界の均衡を図ろうとしたのか,
あとで作った言い訳だったのかもしれない.
だから,息子は,その秘密を知り,
ショックを受けたに違いない.

当時の東西の均衡,そして,
どのような形で原爆が投下されたか.
ある種の科学実験のようなものだ.

どれがベストな回答だったかはわからないが,
今日核の均衡が保たれているすれば,
ジョーンはそれに貢献したことにはなろう.

投稿者プロフィール

天雨 徹
天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」
ブログでは日々の気づきを中心に書いている。
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