「感染したとしても自分では何も変化を感じない、死と同じよ。」ショッキングな作品「リトル・ジョー」

リトルジョー(1)

オススメ度:★★★☆☆(3.6)
理由:リトル・ジョーの香り,
花粉によって,感染した人たち.
彼らの言動がなんとも言えない不気味さ,
得体の知れないもの…,
表面上は人間.中身は別人という「気持ち悪さ」
静かに忍び寄り,そして最期には全世界をも侵食していく.
その不気味さがなんとも言えない.

リトルジョー2

シングルマザーで植物研究者の彼女が創った花.
バイオテクノロジ・遺伝子操作で作り上げた
「その花は幸せになる香り」を放つ.
その花には,息子の名前からちなみ
「リトル・ジョー」と命名した.

その花でもっと幸せになれると思い,
自宅に置いたものの,その花の匂い,
いや花粉を吸った息子が別人になっていく….

姿形が変わらないが,性格なのか,
あるいは発言,行動なのか?
いつも接する息子とは違っている.
そしてその花を取り巻く周囲の
研究者も同様に変化していく….
まるで何かに冒されていくように,
感染していく人々.

生命を遺伝子操作により新種を
創るというのは
神への冒涜かもしれませんね.
良かれと思って創ったその花からの
「幸せになる香り」

そんな香りを放つ新種植物がもたらす不安.

香りを感じるのは脳で,脳が知らず知らずに
おかしくなっていく,その不気味さ.
そして,皆が変われば,皆が異常になれば,
残された少数の正常者は逆に異常扱いされる
この異常さ.
表面的には,とても静かに忍びよるが,
粛々と汚染されていく様は,本当にゾッとする.
また,BGM音楽の担当が日本人だけに,
お囃子.雅楽の音がなんとも不気味さを
そして気持ち悪さを一層増している.

正常者がそんな異常の中で生きていくには,
異常のふりをして,そっと生きていくしかない
のかもしれず,その感覚がとても怖く,
それも新鮮な作品だ.

知らないふり…知らないふりというのは,
ひょっとしたら,生き残るうえで,
とても大事な種の保存の術かもしれません.

作品は新種の花でしたが,こんな匂いを,
職場で嗅いたことがあるかもしれません.

裸の王様をみて皆が裸と気づいていて,
黙って見て見ぬふりをする…
といった感覚とは少し違う.

この作品の恐ろしいところは,
皆が裸で,人前で歩くことが普通なんだと,
本当は異常なのに,正常に服を着ていた人の
服を皆で脱がす異常さ(正常さ)なのだ.

でも,考えてみれば,
この花「リトル・ジョー」を
傍に置くだけで,その花によって,
何も疑問に思わず「幸せ」を感じられるのであれば,
それはそれで素晴らしいかもしれない.
争いもなくなる可能性すらある.
これが洗脳ということかもしれない.

自由にまかせると色々な考えがあり,
どれが正しいのか,
そして民主主義が必ずしも正しい対処方法ではない
現実を考えると,洗脳されて幸せといった考えも
捨てがたいものかもしれません.
考えさせられる作品でした.

投稿者プロフィール

天雨 徹
天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」
ブログでは日々の気づきを中心に書いている。
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