2回目はメモを片手に鑑賞,クリストファー・ノーランの『TENET テネット』

TENET

オススメ度:★★★★★(4.7)
理由:この世のことを本当は
知ったつもりでいるけど,
全く知っていない,
氷山の一角だったようにも思う.
この宇宙,そして地球,生命の神秘.
考えられない偶然の連続.まさに神業.
そんな世の中を
少し垣間見せてくれるのがノーランの作品だ.
今回の作品はやたら謎解きが多すぎ.
これまでの常識を覆すような展開.
まさに「考えるな、感じろ!」である.
映像,音響,音楽どれひとつとして,
妥協のない内容だ.

夢の世界の「インセプション」(2010)か,
あるいは時間空間,相対性理論を見事に表した「インターステラー」(2014).

パラレルワールドの世界.

わかったようなわからないような
世界ではあるが,作品を通じて少なくとも
「全くわからない」状態から
「こんな感じのことを言うのか」と
映像により具現化されているとも言える.

時間を逆行している間,
そこでは時間を順行している
自分自身に出会うことがある.
逆行中は空気(酸素)マスクは
欠かせない.
順行と逆行がまさに
ひとつになる瞬間を
感じられる作品だ.

あまり難しいことを
理解しようとせずに映像を肌で
「感じる」だけでも十分に面白い,
一度目の鑑賞はそれ.
Dolby Cinemaの迫力は半端ない.
これぞ映画といえる作品だ

壮大なストーリーに言葉がない.
TENETは前後どちらから読んでもTENET.
そんなタイトルもまた素晴らしい着想だ.
作品中にそうした山本山的な回文があちこちに
散りばめられている.実にニクイ演出.
横文字がすぐ分かる人には
面白くてたまらないだろう.

「TENET」…まさに
その言葉の使い方次第で,
人類の未来が決まるのだ.

時間は後退しないという,
これまでの一方通行の概念が覆る瞬間.

ちまたには3回観てようやく内容が
わかりかけてくる.5回は必要という
人もいる.たしかに奥が深い.
逆に1回では理解できないからこそ面白い.

初回で冒頭のシーンと後半とが結びつく.
とてもそういう意味では一度の鑑賞では
理解できない…というか,
最初に隠されたヒント.
一回目の鑑賞でそれを見逃してしまった.

最初の冒頭から新感覚のカッ飛びの内容.
これは凄いとしか言えない.

共通した時間軸の世界で,
そのリアルな時間とともに
逆行が同時進行していく.
入り乱れていくのだ.
観ていて頭の中が入り乱れ,
そもそも頭の中でも
入り乱れたものは元に戻らないという
エントロピー増大則が
成り立っているからだろう.

この作品を見ると,他のショボい作品が
馬鹿馬鹿しく見えてくる.

これは
疑似科学が入るからこそ,
エンタメ作品がさらに深みを増してくる
とも言える.登場人物が少ない割に内容が
複雑なだけに,凝縮感も半端ないのだ.

↓↓↓ここからネタバレ注意↓↓↓
「プルトニウム241」として誰もが信じていた
ケースの中には,実は核物質ではなく,
何やら不可思議な装置の一部分のような
部品だった.なぜそれが「プルトニウム241」
という名だったのか.
それは「アルゴリズム」という
未来人の科学者が製造した兵器で,
その驚異を恐れた未来人は
その装置を9つに分割して
各地の各施設に隠したものだった.
「アルゴリズム」とはおそらく
人類滅亡の手順として必要なものだ.
これを理解するのに時間がかかる.

大胆にも,冒頭のテロ事件は実は,
人類を救うために組織された「TENET」に
加わるための試練だったという.
そして,時間を逆に回すことができる
装置を利用し,自分がどうせ死ぬなら…
と世界も道連れにしようと企む,
死の商人セイター.
これが第三次世界大戦の幕開けだ.
CIAの名もなき男と相方ニール,
そして息子を半ば人質のようにされている
セイターの妻キャット.
主な登場人物は比較的少ない.

「エントロピー増大則」…AとBという物質が
混ざり合う.その時エントロピーが低いと
混ざり合わない.逆に故意にスプーンとか
何かで混ぜ合わせたとしたら,無秩序に
一緒になる.その時はエントロピーが
高いと言う.この一度混ぜ合わ合わせた
2つを元通りに分ける,普通は簡単に
還元はできない….
これが「エントロピー増大則」
( 熱力学第二法則)だった.

この法則には時間の流れという
概念は元々はないが,
エントロピーが増える向きそのものが,
時間とすれば,エントロピーが増えて
行く方向が未来,逆に減って行く方向が
過去ということにもなる.
時間の方向を決めているのが
エントロピーということにもなろう.
時間軸に対して,これがもしも
エントロピーが減少したら,
時間は逆行するはずだ.
そこからこのストーリーははじまる.

未来から送られてきた名前「TENET」.
TENETとは主張といった意味が
あるらしい.その言葉の使い方次第で,
我々人類が滅亡から救われるという.
この言葉を口にするモノが,
この人類の危機を救う上で
大きな役割を果たすのだ.
この名前のない男….
彼が主人公だったのだ.

名もなき男

それはCIAに属しているから
名前が無いのかとも思ったが,
実は彼こそが「神」.
だから名前が無いなのだ.
TENETの黒幕は,
名もない男だった….

第三次大戦の戦場は,
逆行の装置となる回転ドアや
ヘリも武器も少し
ノスタルジックな香りがする.

時間が逆行するには,回転ドアを通り,
その向こう側に時間を
逆行する自分が現れるようだ.
逆行側と順行側の間はガラス窓がある.
回転ドアに入るには,
向こう側の自分を見る必要がある.
逆行している時には,
外気がそもそもエントロピーが違うので
肺には直接取り込めない.
だから空気(字幕では酸素)
マスクが必要である.
また防御スーツを着ないで
過去の自分と接触したりすると,
エントロピー増大則から時間が
関係するため,粒子の対が一致し,
消滅してしまう.そして,
エントロピーが増大則が反対に動くことで
時間が戻るとするなら,
当然熱も反転することになる.
火は氷になるということだ.

何度も呪文のように唱える特殊部隊の合言葉.
We Live in a Twilight World.(黄昏に生きる)
There Are No Friends at Dusk.(「宵に友なし)
これまた含みのある言葉のようだが,理解できなかった.

赤い部屋では時間が順行する.
そして青い部屋では時間が逆行する.
順行する舞台は赤い腕章を,
そして逆行するので青い腕章を付けて
見分けができるようにしている.
(冒頭のシーンでもそのワッペンがあった9

第三次大戦の戦場となった旧ソ連の軍事.
研究施設都市「スタルスク12」.
今は放射能により廃墟となったシベリアの街である.
そして.セイターの出身地でもある.
そこでパラレルワールドのような世界を
創造することになる.

ミッションは世界滅亡の救済だ.

入ってくる情報が大量過ぎて処理能力を
遥かに超えている.
一瞬怯んでいるとアッという間に
置いていかれる感覚だった.
実によくできていた.深い感謝しかない.

投稿者プロフィール

天雨 徹
天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」
ブログでは日々の気づきを中心に書いている。
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