寄り添う気持ち,根深い差別は他人事ではない「82年生まれ、キム・ジヨン」

オススメ度:★★★★☆(4.5)
理由:ジャンダーを語るには避けて通れない.
これは凄い.非常によく描かれている.
辛さもよくわかる共感する部分,
そして自分自身が猛省する部分など,
数多くを感じ取ることができる作品.

ジェンダーでの差別,
これは韓国社会だけの問題ではない.
日本でも最近まであった問題でもある.
いや,厳密にはまだ解決してはいない.
暗黙の見えない性差別の壁があるのだ.
結婚,出産を機に職場を
辞める女性は当たり前,仕事と
家庭の両立などは到底無理…,
といった風潮のある社会.

以前,日本でもいや,
今でもあるのかもしれない.
産休や育児休暇を取得したら,
男女ともに自身のキャリアに影響を
及ぼす企業風土.女性を性の対象として
見る蔑視とした男性.
そして半ば察して遠慮する女性の気持ち.

韓国だからと,他人事には決して思えない.

世界16か国で翻訳された小説.
韓国では130万部以上の販売部数を
記録するベストセラーとなった
原作の映画化.
原作は,タイトルどおり82年生まれの
「キム・ジヨン」という女性の記憶に
基づいた告白と,
それを裏づける統計資料から
語られている.
ストーリーは大学卒業後に広告代理店で
勤務していたが,娘の出産に伴い退職し
以降は専業主婦としての女性を描いている.

ライフ・ワーク・バランス,
男女平等,SDGs,ダイバーシティと
言われて久しいにも関わらす,
相変わらず女性ということだけで,
味わう不快な感覚.
そんな中にあって特にあの作品の夫の
振る舞いに,とても共感を持った.

妻の病を理解し,そこから愛しているから
こそ助けようとする夫.しかし,その言葉から
夫の思う気持ちと妻の気持ちとのズレ,
相手を思うからこそ言葉にしたことが,
結果として相手を傷つける.
それは意識や認識のズレ.
裏目にでることがあるものだ.
寄り添いたいと思えば思うほど,
独りよがりになり,空回りにもなる.

主人公の特に父親の持つ娘への,
あのいい加減な対応は,よくありがちだ.
他人事ではないように思えた.

嫁姑の問題,痴漢やいじめに対して,
いじめられる方もスキがあるから悪い
という本末転倒な父親の言動.

しかし,父親もまた,娘を思って語っている.
その語っている言葉の端々の無意識の差別が
はびこっている.
それでいて決して父親が娘を思っていない
ということにならないところが
社会の複雑さ深さを示唆している.

また夫の企業研修の中で「セクハラ研修」を
受講した男子社員が雑談する中の会話に
「この忙しいのに…」
今の風潮を垣間見た気がする.

主人公も辛いが,夫も母も
彼女を愛しているからこそ辛いし,
寄り添う気持ちがよくわかる.
何よりも強制もできない.
本人に気づいてほしい.
動いてほしいを願うしかないのかもしれない.
やらされ感では,
治るものも治らないように思う.

ちょうど認知症の今は亡き父のことを
思い出した.
本人が病院に行きたいと認識して,
そして本人自ら行きたいから行く,
そう認識して,はじめて動き出すのだ.

高校,大学受験,就職と,
とっても真面目に取り組んで
やってきたにも関わらず,
世の中の風潮,理不尽な上司の言葉.
周囲の意識が変わらない中,
自身を如何にその理不尽な環境に
適合させていくか.

結局は過去を他人は変えられない.
変えられるとしたら,それは自分しかない.

しかし,それはそう簡単に
できるものではない.
「子どものことは奥さん,
私は働いている.家のことは奥さんが
してほしい」

そんな本音が見え隠れしている
自分にも気づく.
だから,
たまにやる家の掃除が
「掃除してあげてる」
といった言葉になるのだ.

「はちどり」も今回の作品も,
韓国映画は人間模様を
上手く描いている作品が多い.
今回の作品も社会の歪を
よく描いている作品だ.

投稿者プロフィール

天雨 徹
天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」
ブログでは日々の気づきを中心に書いている。
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