宗教・哲学・ヒーラー…すべてが詰まっている作品「ウルフウォーカー」

ウルフウォカー

オススメ度:★★★★☆(4.2)
理由:不思議な世界.
物語の内容は神話だけに単純にもみえる.
でも実は深い.その中で,なんとも
不思議な体験ができる.
まさに傷口に手を当てるだけで治すヒーラー….
非常に奥が深く考えさせられる作品で,
今の世界に何か訴えているような,
とってもオススメの一本です.

WOLFWALKERS

アイルランドのケルト神話.
アニメーションによるトム・ムーア監督作品.
ケルト3部作とも言われている.
前作は『ブレンダンとケルズの秘密』
『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』で,
本作はそれに続く作品だ.
この作品を通じて,
前作が見たくなっった.

深いというのは,たとえば
イングランドとアイルランド
キリスト教(絶対神)と
ケルト信仰(多数神・自然)
人間とオオカミ,親子関係
さまざまな対局にある構造
実に深い.

少女ロビンの父を家族を
互いに思いやる気持ち,
そしてもう絶滅してしまったオオカミ.
それは森を開拓するために,
人間にとって恐ろしいと
されるオオカミを駆除することで,
文明を栄えた…
ということかもしれない.

本作品は真逆.
そのオオカミを
崇めるような神話の存在.

オオカミには
何か不思議な力が
宿っているような気もする.
また,魂の存在,
生命の神秘をも感じられる.

護国卿は
暴君のように振る舞う
支配階級の人間ではあるが,
実は神を信じていて,
自分の使命を全うしているという
宗教観もあり考えさせられる.

宗教観で言えば,
自然そのものに神が
やどる多神教と,
全ては唯一の神の存在があって,

護国卿は後者.
その神の意志に従って
動いているだけ
という支配者の存在.
そしてそのプロパガンダに順応する人々,

人はおごらずに謙虚に生きていく,
そうした姿勢が必要だと
気が付かせてくれる.

そんな作品だ.

人とあらゆる生物との共存.
忘れかけていたものが
戻るような錯覚すら覚える.

バンパイヤーの如く
月夜にオオカミに
変身するのではなく,
人間の肉体が眠った時に,
魂が離脱して,オオカミに変身する.
オオカミは人間の時の意識を
持っている.
この点が
月夜のバンパイヤーとは違う.

何やら,魂の修行にも似た
この神話が,私には妙にしっくりくる.

アニメーションにも
惹かれるものがる.
城内はモノトーンで単調に描くことで,
優しさやぬくもり,思いやりを
全く感じない印象を与えている.
逆にオオカミの住む森は,
色鮮やかなタッチで全く正反対なのだ.

人はピラミッドの頂点にあって,
地球を我モノ顔でやりたい
放題のことをする.

自我.人それぞれは,
本来は共同で助け合って
生きていくものなのに,
いつの日か,支配する側と
される側に分かれて,
競争を促進することで,
進歩発展を遂げてきた.
しかし,その風景は
明らかにモノトーンなのだ.

トイストーリーを
はじめ3Dアニメとは違った
2Dは2Dなりの味がある.
技術を制約されることで
逆に画像表現に深みがある
のかもしれません.

現代社会について,
シャープに激しい突っ込んだ
切り口はないが,
問題提起がとても複雑というか,
シンプルの中にあって,
様々に絡み合っている現実社会,

たとえば,群集心理であったり,
迫害,差別,従事する,
労働するということの意味.
その一方で敬うことや愛,
あらゆる生態系の保護,SDGs

そうした問題をひとつに絞らずに
何か暖かさの中に悲しみがある
じんわりした
こうした作品も味わいがある.
本当に鑑賞して良かった.

投稿者プロフィール

天雨 徹
天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」
ブログでは日々の気づきを中心に書いている。
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