泣ける,切ない…そして凄く共感した作品「ジョゼと虎と魚たち」

オススメ度:★★★★★(4.7)
理由:魂が震え,泣けた.物凄く共感した.
それはなぜか.自分自身と重なったからだ.
下肢麻痺のジョゼ.
私も30年前に事故で脊髄損傷をし,
下肢不全麻痺が残っている.
幸い車椅子経験は短期間で
終わったものの,ジョゼの気持ち.
引き籠って外に出ない気持ち.
健常者と障害者.
健常者に対する劣等感.
卑屈になる気持ち…
実によく描かれており,
よく「わかる」のだ.

本作の設定とストーリーは,
とても身近に感じられた.
だからこそ,共感する部分が多い.
切なさは現実の壁を表して
いるようにも思える.
正解のない答えだけに重い.
それがどうしようもなく
切なく感じられる.
挫折することもある.
ここまでせっかく
来たのに,
最後の最後で
どうしてこんなことに…
と思うこともある.

悪夢ならさめてほしい.
でも現実なのだ.
最終的には
割り切って生きていく
しかないかもしれない.
自分で納得すること.
そして,その中で
やれることを進めること.
それはひょっとしたら,
自分のことではなくて,
子どもたちや,彼や彼女
友達.
人のために…
かもしれないのだ.

喜怒哀楽がある作品で,
絶望の淵で生きること,
夢を諦める瞬間.
壊れた瞬間.
もうどうでもいいと
投げやりになる瞬間.
すべての感情が
詰まっている.

原作は2年前に
亡くなった田辺聖子さん.
50代で執筆した
短編恋愛小説.

脚本・演出により,
こんなにも違って
映し出されるものなのか.
これも映画の醍醐味.

実写版が03年に
妻夫木聡/池脇千鶴共演.

脚本・演出で原作とは
違って見えた.
リメイク版が
韓国でも制作され
日本でも近く公開
される予定らしい.

大学生恒夫の設定が
実写版では
アルバイト先が雀荘.
本作アニメ版では
ダイビングショップ.

些細な違いでも
こんなに違って見えるのか.

アニメはアニメの良さがある.
桜.紅葉.海,
アニメが綺麗で,
そして切ない中にも,
優しく温かい.

どの登場人物も
悪い人はいない.
そんな世界に憧れる.

下肢麻痺の山村クミ子,
彼女はフランソワーズ・
サガンのファンで,
その小説の登場人物の
名前から「ジョゼ」と
名乗っている.

ジョゼは本好き.
だから知識は豊富だ.
しかし外出しないから
外の世界が見えない.

夢と現実の世界.
ジョゼは絵を描くことが好き.
読書で想像する世界で生きる.
眠っている時,
憧れて虚ろに
なっている時,
その中で自分が生きている
存在を確かめる.最高の時間だ.
でも,そんな空間から
現実の世界に出ると,
叶わない…
だから引き篭もる.

現実の世界は怖い.

凄く共感した.
私が脊髄損傷.入院生活.
経験した1年の休職.
昼夜逆転の世界.
この深い闇から
一体いつ脱出できるのか.
焦燥感.脱力感.自己嫌悪.
どれもど真ん中に突き刺さった.

自然と涙が煽れた.

そんな深海で真っ暗な中でも,
一部に光が差し込むことが
あるものだ.それも偶然に.
どこでスイッチが入るかわからない.
どこで前向きになれるかわからない.
人と多く出会うことで,人は成長する.
誰と出会うか.出会うためには,
やっぱり,自ら恐る恐るでも一歩前に
踏み出すことが必要なのだ.

障害者が社会生活を送るのは
大変なことだ.
過酷な生活を知る
「管理人」である大学生.
互いに好きになっても
その人を
障害者を
支えていけるのか,

一方,
障害者は,
こんな私でいいのか.

お互いに
不安ばかりがよぎる.
思ったことが
自分の努力次第で
叶うことができる.
それは健常者だったからだ.

そう思ったときも
あったが,実は,
障害者も健常者も
どちらも,
夢を諦めないという姿勢と
一歩前に出る勇気だ.

人は
与えられた環境の中で
できることをする.

ジョゼの描いた絵本を
図書館のこども達に
読み聞かせするシーンでは
号泣した.

ラスト10分は
ちょっと拙速で,
そんなに単純では
ないかもしれませんが,
それでも,
共感する部分の方が多く,
とても良い素晴らしい作品で,
これは名作だ.

投稿者プロフィール

天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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