クメール・ルージュ革命で引き裂かれた家族「FUNAN フナン」

FUNAN(1)

オススメ度:★★★★☆(4.2)
理由:魂が揺さぶられるほどの
インパクトは無かったが,
このポル・ポトの時代の
事実を知る意義は大きい.
これは知っておくべきことで,
観て感じることが多い作品だ.

カンボジアの
あの暗黒の時代を
描いたアニメ映画.
カンボジアだけに
全編フランス語.いや,
元々監督がフランス出身.
フランス映画だ.
1975年4月の
クメール・ルージュの革命.
本作の監督自身の調査,
母親の記憶を元に
制作したものらしい.

そして,
映画タイトルの
「FUNAN フナン」とは,
メコン川下流域に
広がっていた扶南という国家で,
1C~7Cまで
実在したとされる.
このタイトルから
監督自身のルーツという
意味合いを含んでいるらしい.

ある日ポル・ポト率いる
共産武装組織クメール・ルージュが
首都を制圧し,革命政権が樹立された.
ラジオから流れるプノンペン陥落の
ニュースを聞きながら食事をする家族.
普通の日常生活.しかしそこから
生活は一変する.
ラジオから流れて束の間.
家族が都市からの強制退去を
命じられるところから始まる.

農村への移動.
最初は車を移動手段に使ったが,
資本国家の道具は破壊される
べきということで,
兵士に叩き壊されてしまう.
延々と徒歩で移動.
その移動中にわずか3歳の
息子が家族から逸れてしまう.
必死で探そうとするが
探すことを禁じられ,
強制労働に追いやられる.
美しい延々風景に浮かぶ夕日.
それと対照的な非人道的な行為.
理不尽な殺戮.
そして過酷な労働,餓死….

カンボジア・ベトナム戦争に
乗じて,難民としての
国外逃亡を図る.
目指す先はタイだ.

結局,この戦争で
クメール・ルージュは
最終的に解体される.
しかしその後も
中国とベトナム介入などで
政情不安・カンボジア内戦へと
通じ,暫く終わることはなかった.

あの時代を生き抜く親子の物語.
あの時代の粛清で実に国民の1/4を
失い,作家,医者をはじめ文化人が
殺された.
単調なアニメ描写ではあるが,
その内容が凄い.
惨たらしい殺戮の描写は
一切控えて,起きた出来事を
淡々と伝えている.
それでいて,なぜかそれが
物凄く心に刺さる.
親子の感動物語的な描写はない.
その正面から対峙する作品が
訴えるものが逆に
凄いのかもしれない.

アニメにより実写で
得られるような
リアルな惨劇や人の感情
描写を敢えて抑えて事実を
淡々の描く.

アニメなのに
最新のグラフック映像技術を
駆使するわけでもない.
そうした作品に見慣れたせいか,
物足りなさも残る.
でも,逆にそこが返って
新鮮に映った.

こんな状況が
許されるはずがない.
それがまかり通る社会が
約半世紀前に実際に
あったということ.
それが怖い.
決して道を
誤らないように
したいものだ.

FUNN(2)

投稿者プロフィール

天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」
ブログでは日々の気づきを中心に書いている。
詳細プロフィールはこちら。