これは制作背景を知ってから観るべきだ「DAU.ナターシャ」

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オススメ度:★★★☆☆(3.6)
理由:なんと表現してよいのか.
退屈な日常を観るのは
見る側にとっては苦痛
でもある.しかし,
その日常会話で研究所の
科学者らしき人たちが
食事をしながら会話する
兵器の話などはまさにリアル.
思わず拷問は
ひいてしまうほどの内容.
これは実験的に創られた
作品で今後どのような方向に
進むのか注目したい.

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DAUプロジェクトとは,
ダウというソ連の科学者の
伝記映画を制作する試みだ.
ロシアの理論物理学者
ランダウの頭文字のDAU.
レフ・ダヴィドヴィッチ・ランダウだ.
彼は絶対零度(摂氏 マイナス273度)
近くでのヘリウムの理論的研究によって
ノーベル物理学賞に輝いた.
彼はナチやスターリンを批判し,
獄中経験もあるが,
結果として意に反して
ソ連の核兵器開発に貢献する
ことになる.
晩年は交通事故で
命は取り留めるも
必ずしも良い死に方ではない.

そんな彼の伝記作品.
そのためにDAUが
勤めていた研究施設を再現し,
膨大な時間と手間,制作費を
掛けた作品集の最初の一作.
映画のセットに実際に
生活してもらい当時を
再現するという試みは凄い.

脚本なし,演技指導も
なかったという,
まさにぶっつけ本番,即興での
撮影らしい.
スターリン時代の一部を
まるで切り取ったような作品.

そんな想いで作品を
鑑賞すると,
まだこれは「序章」に過ぎないのだ.

ソ連の軍事基地の
研究所施設の食堂で働く女性
ナターシャ.
食堂にはもうひとりの
後輩ウエイトレスがいる.
ある日フランスの科学者が
滞在中,飲んだ勢いも
あったのか,いい仲になる.
職場では,後輩のウエイトレスに
ウォッカの大量に飲ませて
急性アルコール中毒にさせた.
そんなナターシャは
KGB当局に呼ばれて
事情聴取を受けることになる.

前半から中盤までは
眠くて退屈な内容だ.
フランス科学者との
絡みのシーンは
まるで三流のポルノ映画を
観るような感覚で,
「これは時間の無駄をしたかな?」
と後悔.ところが後半,
KGB当局の取り調べからの
迫力は凄いものだ.

現実の世界で
本当にあったことなのか.
ひょっとして今でも
続いているのか.
あまりにリアル過ぎる.
虐待を受けることで,
彼女も精神状態が
おかしくなって,
逆に恋のような錯覚を
受ける極限の状態.

これはもはや,
取り調べではなく拷問だ.
これは酷い.

これはあたかも
ナターシャ自身の
ドキュメンタリーのような
まるで生活の一部を切り取った
ような描写.
バックに音楽が一切ない.
それだけにリアルさが
強調されるといってもいい.
ジェンダー,性差別,
先輩と後輩.職場差別.
さまざまな差別が存在する.
そして暴力と
性的ハラスメント,
なんでもありの恐怖世界.
常に監視されているような
感覚にも陥る.

作中には…
核兵器ではなくて
電磁パルス攻撃という
物騒なネタもあった.
まさにドキュメンタリータッチ.

彼女の日常.
だらけた毎日を描くことで,
逆に残り拷問が余りにもリアル.
この後どうなっていくのだろうか?

制作年数十数年を掛けた
DAUプロジェクト.
14部作も作ったという.
それだけに続編が
どんな形になるのか
楽しみでもある.

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投稿者プロフィール

天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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