正義とは一体何かエゴなのか「ジャスト6.5 闘いの証」

6.5

オススメ度:★★★★☆(4.0)
理由:一見,出だしで勧善懲悪の
水戸黄門的作品と思ったが
見事に良い意味で期待を
裏切られた作品.はじめてのイラン作品
人間の心を捕らえた良い作品で出会えた.

本作品は犯人探しのサスペンスではない.
表面上は勧善懲悪に見えて,
実は心の中では逆転している.
正義感はあるものの,
実は出世のために頑張っている人生.
犯人逮捕のためなら脅迫や
調書の改竄をする.
保身や出世のために
同僚ですら牢屋に放り込む.
他方,麻薬売買は悪ではあるが,
家族愛には溢れている.
闇は深いし,
必ずしも勧善懲悪ではないのだ.
複雑な社会というのは,
そんなに単純に解決するものではない.

原タイトルは,
1メートルあたり6.5.
何が「1メートルあたり6.5」なのか.
薬物中毒者が650万人なのか.
麻薬が6.5kgなのだろうか.

麻薬撲滅に元締めを徹底的に
しょっ引く刑事マサド.
彼はそうすることで,
貧困者をヤク中毒から救えると
考えた.ところが結果は逆で,
元締めが居なくなることで,
ヤクづけ中毒者が増えたという皮肉.

マサドは,何よりも正義のため,
貧しい人を麻薬から救うために
何が何でも黒幕を潰そうと必死になる.
しかし,同時に手柄を挙げて
出世したいという気持ちもある.
そのため彼がとった行動は,
ホームレスや低所得層で
流行っている麻薬の末端の売人を
あぶり出すことで
元締めを突き止めて
根絶やしにしようとする.

他方,麻薬の元締めナセルは,
家族や兄弟姉妹に愛がある.
このため,貧困から脱出するために
手を染めた.
取締が厳しくなり,
いずれ捕まると知ると,
自ら死を選ぶことで
家族を助けようとする.
自分だけが消えることで家族を
助けるとした気持ちがあるのだ.

しかし,自殺未遂に終わり,
結局留置所へ.
ナセルは,留置所で出会った親子.
子どもに罪を被せる
トンデモナイ年老いた最低の父親に
罵倒を浴びせる.
そうした親としての気持ちが厚い.

そんな,ろくでもない親を庇う子.
トンデモナイ父親を庇う子どもが
とても愛らしい.
スラム街,土管暮らしの生活.
そこで楽しく水遊びをする幼児.

貧富の差をひっくり返すには,
いくら正当な方法で仕事をしても,
ワーキングプアに陥ることになる.
搾取される側は永遠と搾取され,
富は貧しい人からむしり取る
という構図となっている.

ならば,その負のスパイラルを
ひっくり返すことをしなければ,
永遠に続くことなる.
でも,だからといって,
麻薬に手を染めることが
良いことではない.

留置所の狭さ.集団絞首刑の風景.
イランという国の厳しさがよく分かる.
イランでは麻薬の製造も売人も死刑.
だから逃げるのは必死になるはずだ.

そして,どれだけマサドが手柄をあげ,
そうした麻薬元締めをとっ捕まえても,
決して麻薬依存者は減ることはない.
むしろ末端価格は上昇し,
中毒患者も増えていく
という皮肉な結果が待っていた.

それが悲しい現実なのだ.

投稿者プロフィール

天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
詳細プロフィールはこちら。