鑑賞後オフィシャルのキーワードを観るのがオススメ『ビバリウム』

ビバリウム

オススメ度:★★★★☆(3.9)
理由:普通の視点で人生を
とらえると見えない部分を
巧く描写している作品だ.
当たり前のような
日常生活も少しだけ
ズレて穿った見方で
眺めると随分外れて
しまうものだ.

類似作品としては
ミッドサマー」で
あろうか.ちょっと違うかな.

何処まで行っても,
何処まで逃げても,
決して逃げられない世界.
毎日毎日毎日変化のない,
いや,全く同じ食事,
同じ動作.そうした世界観が面白い.

2019年の
アイルランドのSFホラー映画.
一般に恋人同士.
二人は,最初は相手がいることだけに
満足する.それがそのうちに
終の棲家を求める.マイホームだ.
そして子づくり.
まるでこの時期,
燕が巣作りをして,
卵を孵化し雛を育てることに近い.
やがて子は成長し親元を離れる.

実は好き嫌いは個性なのか.
誰もが種の保存のために
セックスをして子孫を残す.
そこに個性はあるのか?
全く似たような戸建て.
オリジナルなように
見えて隣の家と
ほぼ同じような間取り.
色といいデザインも
ほぼ同じ家々が並ぶ.

無限ループの町並みは,
まるで高度成長時に
建てられた新興住宅街に近い.
道路も整備され,
似たような区画に道が走る.

番地も似ていて
一旦入り込むと
迷子になりそうな光景だ.

少しネタバレにはなるが…,
生まれてから成人になるまで,
一生懸命に育てた子ども.
手塩に育てたこの子どもからも,
やがては成長し恩返しを
することなく無情にも
裏切られる.

生命の誕生,
人以外の鳥類も
哺乳類もどんな動物も,
親は子を期待してはいけない.
巣にいる他に比べて
成長著しい雛は,
劣った雛を巣から落として
自分の成長を願う.
下剋上に近い.
いわゆる
カッコウの托卵だ.

この作品を観た時の当惑.
ゾッとする点,
目を背けたくなる感覚.
しかしその比喩的な表現の
奥底にある真実は何か?
それを知りたいという気持ち.
登場人物は実に少ない.
人の心の動きが
よく感じられる.
胸くそが悪くなる
不思議な感覚が何か?
それを確認するような作品だ.

極端に登場人物が少ないのは,
心の描写が見事!
面白い作品が多い.

毎日が同じ生活の
繰り返しで変化の
無い生活.
庭先に穴でも掘りたくなるだろう.
しかしその穴が
まさか自らを
埋葬するためにとしたら,
後味がなんとも悪い.

実際にありえない
設定の中にあって,
それでも,いかにも
ありそうな心理描写.

結局,
どんなメッセージが
隠されているのかは
鑑賞者自身に
委ねられている.

人も,
カッコウの巣と同様,
自分の良心に無関係に
自己中心的な
本能が作動していくのか.

一見理解不能なものは
時として脳に新しい
刺激を与えるものだ.

あの雲が
フラクタル図形とすれば,
それは恐ろしい.

解説が
オフィシャルサイトのキーワード集
にある.

カッコウの托卵とか.
近くも遠くもない距離「yonder」とか,
viva(万歳)+arium(場所)で
「素晴らしい場所」とかだ.
実に奥が深い.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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