オススメ度:★★★★☆(4.0)
理由:LGBTに関する作品.
感情移入もできる.そして…
あのタイタニック,ローズ役の
ケイト・ウィンスレットの
演技が見事だ.
もちろん美しい人妻役の
シアーシャ・ローナンも魅力的.
心の中の葛藤.嫉妬,恋愛感情,
そうしたすべてを繊細に描ききる
醍醐味.
アクションシーンでなく,
心の触れ合いを
登場人物が極少ない中で
非常に工夫されている.
圧巻だ.
実在の古生物学者メアリー・アニング.
大英博物館にも自身の化石が
飾られている.
彼女がそれを発見してから
もう数十年の歳月が流れ,
今や本人も廃れて
観光客相手にありふれた化石を
売って年老いた母と生計を
立てている.
そして,これまた実在の地質学者
ロデリック・マーチソン.
恐らく彼は裕福な貴族出身
なんだろう.
彼の妻は鬱を発症しているようで,
メーチソンが留守の間,
彼女を暫く預かって欲しいと頼む.
彼の妻は実在したかどうか,
ここからは脚本であろう,
いわゆるいいトコのお嬢さんと
貧しい学者との差.
当然,生まれた環境もあって
価値観が違う.
そんな価値観の違う二人.
そこに共通な価値観もあった.
それは「独りぼっち」
という感覚.
孤独という不自由さ.
不自由とは物質的不自由さ,
つまりそれは金銭的なもの.
そして他方,
裕福な男性のお飾り的な存在.
心の不自由さ.
どちらも「孤独」である.
40代と20代.
歳も生きてきた環境も違い,
当然持つ価値観も違う.
反発しあい,時に嫉妬してみたり,
それでいて信頼や友情に似た感覚.
やがては恋愛へと
発展していく課程は
人と人との触れ合いが
そうさせるのかもしれない.
特に病の臥せっているところに,
真摯な看病をされると,
互いに情も移るものだと思う.
冷静沈着さの対応が
逆に優しさにも感じる.
人の心の温もりが三次元の
直接肉体の温もりを感じさせ,
互いに求めるように
なるのだろうか.
互いに傷ついている部分を
慰め合ううちに,
感傷しあい,
それは同性であれ,恋愛感情へと
発展していくものなのか.
軽いつもりの「おやすみ」のKISS.
それは火種だ.
あの赤裸々な性描写に,
妙に納得しまった.
愛し合うとは
そういうことだ.
さすがに国際映画祭で
上映されるだけのことはある.
少ないフレーズに心,感情が伴う.
女優2名の演技は見事としか
言いようがない.
特にメアリーを演じる,
タイタニックの
ケイト・ウィンスレットは凄い.
同性愛者というだけで,
蔑視する時代にあって,
本当に好きなら…
異性とか同性は関係ない…
のかもしれない.
冬の凍てつくような海.
岩場にある多くの化石群.
風景.古びた家にあるピアノ.
ランプの揺れる炎.
どれも映像が鮮やかで美しい.
ラストシーン…
大英博物館に展示してある
メアリーが持ち込んだ
ショーケースの中の化石.
そこに対峙する二人.
今後,この二人はどうなるのか.
再びヨリが戻るのか.
このラストシーンの後味は,
人によって感じ方が
違うかもわかりません.
あの余韻の残し方が
たまりません.
まさにこれぞ映画の醍醐味なのだ.
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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