切ない現実,人となり人間性に泣けた「BLUE/ブルー」

BLUE

オススメ度:★★★★☆(4.2)
理由:切ない厳しい現実.
基本がしっかりできている.
努力を惜しまず,人を応援する姿勢.
それでも浮かばれない.
良くやったね.素晴らしいね.と,
言いたいが,
そうならないところに
良さがある作品だ.

主演の松山ケンイチ,
そしてヒロインの木村文乃,
柄本時生,東出昌大が共演する.

試合で負けっぱなしの松山ケンイチ
最初は格好だけの柄本時生
ドクターストップになりそうな
爆弾を脳に抱える東出昌大

そして,
竹原ピストルのエンディング
「きーぷ、うぉーきんぐ!!」が
とてもグッときた.

瓜田信人という常に
負け続けているプロボクサー.
それを松山ケンイチが演じる.

それは吉田恵輔監督自身が
中学時代から30年以上
続けているボクシングの
経験から脚本したものらしい.
これを読み込んだ松山ケンイチが
2年間かけて役作りをしたという.
さすがに松山ケンイチは
プロ中のプロだ.

赤と青.
青コーナというのは,
常にランキング下位の
ボクサーが
立つ場所だという.
挑戦する側のコーナだ.

瓜田はボクシングが
誰よりも大好きではあるが,
好きだけど
必ずしも優秀とは限らない.
どんなに努力し続けていても,
試合に負け続けている選手もいる.
彼はまさにそんな人物だ.

逆に彼が誘った後輩の小川.
演ずるのは東出昌大だ.
彼は抜群な能力で瓜田を抜き,
いまや日本チャンピオンにまで
登りつめるような選手だ.

そんな瓜田をボクシングに
誘ったのは初恋の女性で
木村文乃演ずる千佳.
彼女は今では小川の
フィアンセである.

穿った見方をすれば,
欲しい物全てを小川に
奪われたことにもなる.

どんなに頑張っても,
叶わないこともある.
逆に才能,能力を持ってして
願いが叶いそうな状態でも,
不慮の事故に遭遇する
こともあろう.

カッコウだけでいい…
不順な動機で始めたことが
実は結構ハマったりもする.

家族環境もあろう.
介護を要する
身内がいる場合も
あるだろうし,
大きな障害を
抱えている場合も
あるだろう.

大抵の場合は,
いや,大半の場合は,
頑張っても巧く叶わない.
たとえ叶ったとしても,
それが継続することも少なくない.
また,一度は諦めたのにもかかわらず,
また再出発する場合もあろう.

わかる,わかる…と,
共感する部分が非常に多い作品ではないか.
だから妙に響くのではないか.

切なさ.悔しさ,
頑張る姿勢…泣ける.泣けた.

プロボクサーだけでは
食っていけないし,
その上ケガで引退した後は,
過酷な現実が待っている.

それでも続けたい気持ち.

いつか壊れるなら,
後遺症を恐れるよりも
今を必至に生きるという
ことも大切ではないか.

水戸黄門的な単純な内容ではない.
こうなって欲しいと
思う見る側の視点を見事に
裏切られたリアルな展開が
厳しい現実を示している.

それでも現実を直視しながら,
走り続ける.有るき続けるしかない.

瓜田は何を人から言われても,
人を応援し続ける姿勢.
たとえ自分が浮かなくても,
馬鹿にされても,
絶対怒らない,
その一貫した姿勢にシビレた.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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