思わずほっこり…韓国作品「チャンシルさんには福が多いね」

福が多いね

オススメ度:★★★☆☆(3.0)
理由:『はちどり』『パラサイト』『82年生まれ、キム・ジヨン』といい,最近の韓国映画がいい作品が多い.
こうした派手さもなく,
傑作とはでは言えないものの,
ほっこりする作品だ.

こんな平凡な作品が
なぜ受けるのか.
それは,
監督自らの体験だからだ.
長年にわたりホン・サンス監督作の
プロデューサーを務めてきた
キム・チョヒ監督の作品だからだ.
(ホン・サンスはまだ存命ですが)
その体験が生きているという.

映画作品のプロデューサー
と言えば聞こえが良いが,
中身は雑用係.
支えてきた映画監督が
打ち上げの席で急死.
彼が亡くなったことで,
自分には何も残っていない.
まさに失業の状態だ.
仕方なく女優の家政婦をする.

映画に全てを捧げ,
気づけば40代の女性チャンシルさん.
職も家もない,
未婚でお子さんもいない.
女性が社会人として
自立するにはまだまだ
ハードルが高いのか.

恋の予感…とは,
そんな時は,
その人の勘違い…
ということが多いものだ.
相手の男性も
誤解させたような言動には
罪があるかもしれない.

恋人ではなくて,
「姉のような存在だった…」
と言われれば,
心を寄せた女性は傷つくはずだ.

小津安二郎監督の
大ファンのチャンシルさん.
もの凄く人当たりの良い人なのに.
映画スタッフからは好かれている.
それなのに,
それでも不幸とは?
では反対に幸福とは一体何なのだろうか.

何かに没頭するような,
やりたいことはない.
でも,この日にしたいことはある.
それを一生懸命するしかない….
そう言った大家さんには,

「字が読めないから,字を習っている」と.

その言葉には,
もの凄く背伸びするわけでなく,
身の丈にあったことを
するだけでいいのかもしれない.
肩に力を入れず,
「これでヨシ」として,
人と比べない生き方.
それがいいのではないか.

香港俳優,
40代で自ら命を絶った
レスリーチャン.
彼の幽霊が彼女の元に来る.

寂しい時虚しい時は無性に
「愛」に敏感になるのだろう.
歳なんて関係ない.
幾つなっても
遅すぎることはない.
今が一番若いのだ.

彼女は,
コンフォートゾーンから
外に出ることで,
次の未来が見えるのでは
なかろうか.

それにしても,
周囲の映画スタッフの
人たちが温かい.
まさに福は身近に存在し,
それに気づくかどうか.
そのメッセージに気づいて
「ありがとう」の気持ちに
なれれば,それこそ幸せなのだろう.

現実は厳しい.一発逆転的なことも,
また水戸黄門のようなスッキリ感もない.
でも,歩くしかない.
前を向いて進むしか道はない.
ほっこりとする作品だ.

彼女が小津監督の「東京物語」に
ついて語るシーンがある.
「東京物語」といえば,
主演は笠智衆と原節子.
家族,夫婦,子ども,老い…
人の一生について描かれた作品だ.
デジタル・リマスター,
Netflixで最近観た.

心の動きを
ほのぼのと描いているのは,
その影響もあるのかもしれない.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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