頬をつたわる涙と感動「ブータン 山の教室」

ブータン

オススメ度:★★★★★(4.7)
理由:ノーランや庵野監督の作品が
イマジナリな世界観とすれば,
リアルな世界が本作品だ.
感動が半端ない.素晴らしい.
この大地の自然に神秘を感じる.

あの風景.
ルナナ村までのトレッキング.
ポータとシェルパ.
それにテント泊しながら
目的地まで進む.
ドキュメンタリー作品ではないが,
リアル感がある.
ネパールトレッキングで
体験した感覚に似ている.
随分前にネパールのポカラや
アンナプルナ内院トレッキングを
思い出した.
あの高揚感,躍動感.
思わず涙が溢れるような世界だ.

もの凄くポジティブに
感動する物語でもない.
水戸黄門的なすっきり感もない.
それでも,この静かな感動が
本作品には溢れている.
それはもの凄いことだ.

ブータンのドラマ映画.
アカデミー賞の国際長編映画部門
ノミネートにブータンからは
応募されたものの,
惜しくもノミネートされず.
でも,それだけに見応えがある.

ルナナ村という標高4800mの
トンデモナイ僻地.そこに教師として
短期赴任する教育課程の大学生.
ちょうど日本でいうところの
教育実習生の制度がブータンにも
あるのだろうか.

この学生,教育課程に進学してものの,
全く教師には向いていないと自覚し,
ミュージシャンを夢見て
シオニー移住を夢見ている.
そこに舞い込んできたのが,
この壁地での教育実習の話.
ほぼ冬を除く3クォーターを
過ごすのは彼にとっては苦痛….
途中で投げ出そうとするのも無理もない.

ところが,村の歓迎ぶりは凄い.
子どもたちも学校が愉しみなのだ.

ネパール,インド,パキスタン,
中国に囲まれた海のない王国ブータン.
幸福度というモノサシで
国の豊かさを計ることでは
有名だ.
しかし,経済的には貧しい.
だから彼のように若者は,
自国ではなくて皮肉なことに
「幸せを求めて」海外へ,
オーストラリアへと
夢見ているのだ.
村総出で行う歓迎と送迎.
まさに一期一会,喜びと悲しみ.

ルナナ村の子どもたちは,
自動車を見たことがない.
それもそのハズだ.道路がない.
その村に行くには登山道しか
ないからだ.
子どもたちは比較対象がないから
今の生活に満足する.
子どもたちは生き生きしている.
そこには「いじめ」は皆無だ.
学級委員のペンサムがとても
礼儀正しくて素直で可愛い.
そして周囲には
ヤクの歌が山々に響く.

子どもたちを教える
先生という地位.
ブータンでは,
先生とは
「未来に触れることができる人」
として尊重されているようだ.

山の神.
山々にもヤクにも神が宿る.
ここは個人的に懐かしい
思い出がある.
ヤクの糞が燃料になる.
糞集めだ.

普段は荷役用と乳用に
飼育されている愛着のあるヤク.
まさに生活をともにするヤク.
しかしそんなヤクも
極度の貧困に村が襲われた時,
特に冬.
村人を救うために….
ヤクを潰すことを
強いられることがある.

断腸な思いだろう.
そんな喜怒哀楽な世界.
本来備わっていた人間の姿.
それを感じることができる.

唯一無二の自然の大地.

何もかもが不自由な生活.
その中にあって,
人間本来備わっている幸福感.
文化的生活で錆びきっていた
感覚が研ぎ澄まされたように,
思わず深呼吸したくなる.
2021.3に観た
「ターコイズの空の下で」
にも似ているが,
それ以上にもっと自然を感じる.
最幸な作品に出逢えてよかった.

山の教室

投稿者プロフィール

天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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