ひとはなぜ「私も悪かったごめんなさい」が言えないのか『アオラレ』

アオラレ

オススメ度:★★★★☆(3.8)
理由:意外にも中々見応え!
B級作品かと思ったが,
予想を遥かに超える作品だ.
凝縮した時間,
次々と襲ってくる攻撃に心を休める時間がない展開.
それがまた,たまらなく心地よい.
休む間もない展開だ.
決して派手なカーチェイスではないが,
それがまたリアリティでいっそ恐怖を煽る.

あおり運転と言えば,
1973年の『激突!』の二番煎じと斜に構えていたがそうではない.
違いは何か.
それは本作が現実に起きそうな内容だからだ.
また勧善懲悪でもなく,
被害者にも落ち度があることが,
いいスパイスになっている.
たとえば,
ケータイ,タブレット端末のセキュリティや普段の行動や言動,
人とか車のせい,渋滞のせい,社会のせいではなく,
自分の出来ることは何か.
少し…ほんの少しでいい
相手の身になって…少しだけ考える癖を身につけること,
最悪の場合でもベストを尽くすことなど,
学びがいっぱい溢れている作品だ.

15歳の息子を持つ美容師のレイチェル.
いつも息子を学校に送るのに遅刻ばかり.
渋滞の中信号が変わっても動こうとしない車に腹を立てて,
クラクションを鳴らした.
そこから物語はスタートする.

エスカレートするストッカーを演じるラッセル・クロウ.
迫力が凄まじい.
あえて突っ込みを入れるとすると,
彼は一体何者なのか.
また彼はなぜ,
そんな逆ギレを起こすに至ったか.
ストーカになるような経緯を深堀りしてもらうともっといい作品になったような気がします.

さて一方のレイチェルは被害者ではある.
しかしながら,
そうした行為を相手に赦すスキがあったようにも思える.
彼女は恐らくいつも寝坊して,
あわてて息子を学校へ送り届ける毎日だったのだろう.
車社会が悪い,人が多すぎる,
相手が悪いと思い込むのは,大抵は勘違い.
確かに大方相手とか環境が悪いには違いない.
でもそんな時にでも「自身に落ち度」について気づくことも大事だ.
「いい加減にしろ」という感情.
怒り.
それはすべてを悪い方向へと導くのではないか.
誰もがイライラしながら渋滞に巻き込まれながら運転している.
クラクションを鳴らしたくなる気持ちもわかる.

そしてスマホやタブレなどのットのセキュリティの留意が足りない.
まさに情報社会の時代.
プライベートが覗かれてしまう状態.
ハッカーの存在.普段から気配りが必要だ.
そして,あのクラクションの鳴らし方は,
鳴らされた相手もたとえ否があったにせよ,
腹が立つかもしれません.
彼は彼で,
青信号に変わったことを気づかなかったことに対して悪かったと認めて謝罪した上で,
あのクラクションの鳴らし方を諌めたのだから,
彼はその時点では間違ったことは言っていない.
クラクションを鳴らさずに追い越せば済んだことだったようにも思える.
また,
一言「私もわるかった.ごめんなさい」と言えば済んだことだったように思える.

あの時クラクションを鳴らさなければ良かった….そう思えたかもしれない.

本作は,自身への戒めを受け取り,背筋が伸びる.鑑賞しているこちら側にもメッセージが伝わった作品だ.

投稿者プロフィール

天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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