単なる恋愛ものではない…噂以上の傑作『殺さない彼と死なない彼女』

殺さない彼と死なない彼女

オススメ度:★★★★★(4.5)
理由:どうせ恋愛ものだろうと思っていたが,
予想に反して陥落した.
久しぶりに魂が震えた.
映画らしい映画.特に脚本が素晴らしい.
この発想.時間軸の描き方.
4コマ漫画をここまで実写化できるとは…共感した.

2019年のヒット作.
間宮祥太朗,桜井日奈子のダブル主演.
Twitter発の人気コミックの映画化.
特別興行で鑑賞させていただきました.
全く結末も知らないままに気づけばスクリーンに釘付け.
こんなに魂が揺さぶられたのは久しぶりだ.

ただ気になったのは,
気軽に頻繁で使う高校生の
「死ね」「殺すぞ」という言葉.
この言葉をそんなに気軽に使って欲しくないし,
とても嫌悪感があった.
その点を除けばまさに傑作.

2019年に見逃した作品だけに,
劇場で観られて本当に良かった.
凸凹高校生コンビの男女.
そして幼馴染の女子校生同士の友情,
もう1カップルは片思い女子高生と
それを受ける男子高生.
それぞれ3組の人間関係と経過する時間の取扱い方,
彼ら3組がそれぞれバラバラな展開にも関わらず,
その伏線があることで回収される.
この3組は同じ高校,
そして多分同じ廊下で展開されているのに直接出逢うことはない.
まさに映画の醍醐味.
脚本が素晴らし過ぎるのだ.

何となく虚しさ,
そこからくるなんとも言えないふぁーとした柔らかさ.
陰と陽,明暗は対局でありながら表裏で一体をなすものだ.

一見不釣り合いな男女カップル.
価値観も違っているようで根本のところでは繋がっているような,
そのバランス感覚が実に巧妙.

人はそんなに簡単にポジティブ思考にはなれない.
その過程が丁寧に垣間見れていい,
単に美しいだけではない.
醜い部分もある.
どことなく哀愁があり,
いや,おもいっきり切ない.
それでいて振り返りたくなるし,前向きにもなれる.

「好き」と言われ続けると,
こちらから「私も…」と言いたくない.
それは「僕は君を好きじゃない」と言いながらもだんだん心地よくなり気になっていく.
そして「私も好き」と言えば,
相手は離れるのではないかという不安.

「捨てられる」ということが想定つくから,
だからこそ,自ら先に相手を振る.

いつも死にたいにも関わらず,
虫の死に対して,
校庭にお墓を作るほど繊細に死を慈しむ女子高生.

ワクワクするような夢とか目標も見失い,
なんとなくダラダラと毎日を惰性のように生きている留年生.

学生時代のあの頃の自分が蘇る.
葛藤,駆け引き,幻と夢,
現実…さまざまなことが行き交う.
思わず「あるある」「わかるわかる…」と共感が共感を生む.

夢では会えるより,
現実の世界で会いたい.
だからこそ切ない.

女子高生の4人.
鹿野なな(桜井日奈子),
地味子(恒松祐里),
撫子(箭内夢菜),
きゃぴ子(堀田真由)
それぞれ良さがある.

中盤以降に盛り上がってくる.
特にラスト30分が衝撃的だ.
思いもよらないショック,
そして感動で魂が揺さぶられる瞬間だ.
ようやくここで,
本作のタイトルに気づかされた.

「アイス奢ってやるよ」
「肉まんが良い…」と彼女.
そんな時に素直に肉まんを
奢ってあげられるような
彼のような人で
私も在り続けたいものだ.

投稿者プロフィール

天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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