赤の女王効果を考えてしまう『Arc アーク』

アーク

オススメ度:★★★☆☆(3.3)
理由:作品内容は別にして「不老不死」について考えるキッカケになる.
マクロとミクロ的な史観.挫折,失敗,経験.体験.
不老不死であれば,
時間を大事に扱わない可能性もあるが,
遠い未来もすべて見ることが出来る.
ただ,突然変異とか常に走り続けなければならない赤の女王効果を考えると,
不老不死の世界で人口が増えるとすると,変化が生まれない.
すると感染症が世界を覆う.常に新しい生命が必要のようにも感ずる.

本作はSF短編小説を映画化.
原作はケン・リュウ著『もののあはれ ケン・リュウ短篇傑作集2』の
『円弧(アーク)』だという.
人類で初めて不老不死となった女性の誕生…

役者の醍醐味.演技力が素晴らしい.
17から132歳のリナを演じる芳根京子.小林薫…

価値観が変わる.『銀河鉄道777』の機械の身体.
コロナ禍でのワクチンの接種.
あの接種が有料で高価なものだとしたら差別化が図られ社会が不安に陥ることにもなろう.
命とは限りがあるから儚くて美しい.

17で息子を産み捨て,
19で遺体をボディワークスという技術で生前のままの姿で剥製のようなものを作る仕事に就く.
遺族の深い悲しみは,
遺体を火葬も土葬もせずに末永く自分の元に置いておきたいという気持ちへと変わる.

こうした死んでも生身の身体とする技術を
さらに「不老不死」の研究を進め,
ついに人類は「不老不死」を手に入れた.

2009年に開催された『人体の不思議展』に行ったことを思い出した.
プラストミックと呼ばれる技術である.
防腐処置を施した実物の人体十数体を使い,
筋肉や臓器が展示されていた.
それがより高度に発展した未来の絵姿かもしれない.
倫理的な問題,
死後の尊厳など複雑な問題も絡んでいて真剣に考えると微妙な気持ちになる.

そして,そうした処置を受けることが,
やがては当たり前のようになる.
ちょうど予防接種のように.
永遠の命が果たして本当に幸せなのか.
エージングのいうのは,
心の成長を伴うのではないか.

テーマが神の領域にかかるような作品なので,
残念ながら期待していたよりも若干消化不良だったようだ.

死から解放され,
あらためて「死とは何か」という問に向き合うことで,
人は試されているかもしれません.

人生長ければ長いほど,
「ご縁」という機会も広がりを見せる.
それでも長すぎると終焉を選びたくなるのかもしれない.
栄枯盛衰というサイクルは善なのか悪なのか.

周りの人が誰もが予防接種の如く接種して当たり前と選択するなら,
あえて自分だけが接種しないという道を選ぶことは難しい.

不老不死を選択することが当たり前,
不老不死を選択しなかった人は非常識とした社会だとすると,
どんな世界が待っているのか.
鮮やかな色合いが消え,
モノクロの世界になってしまうのか.

結局,人は
終わりがあっても終わりがなくても,
生きることはできるのだ.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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