searchの監督,期待通りの作品「RUN/ラン」

RUN

オススメ度:★★★★☆(4.3)
理由:始まりから最後まで
息が詰まる.時間に無駄がない脚本.
これは良作.心理的描写がうまい.
果たして親が子にする虐待,毒親と
いうのは連鎖するのだろうか.
鳥肌が経つほどに素晴らしい出来栄えだ.

一見優しそうに見える母親のダイアン.
17歳まで母親を何ら疑うこと無く
育った娘のクロエ.
彼女は未熟児で障害を持って
生まれた.そんな一人娘のクロエを
熱心に面倒を見ていた母親.
ダイアンは,私がいないと娘は
生きていけないと信じきっている.
娘を世話することで,そこに
生きがいを見出しているのだろう.
だからこそ,どんなことをしても
娘の自立は許したくない.それは
「自己の崩壊」につながるからだ.
娘は生きがいそのものだ.
そんな執着を
ダイアンは手放すことが
できないでいるのだ.

シングルマザーでの出産.
その出産体験があまりに
不幸なだけに,
それがトラウマになった
のだろう.

娘のクロエは
足の麻痺で車椅子生活.
でも前向きで好奇心旺盛で
ワシントン大学への進学を
目指している.そして
自立した生活を夢見ている.

そんなある日…
母の名前の処方箋を見て
腑に落ちなかった
出来事があった.

そこから.母への不審が
募っていく.
母親は娘への歪んだ
愛情を抱いてる.
歪んだ母性というのは,
悍ましい.

日常というのは,
実は創られたもの
そのものだ..

では,これまでの日常とは
一体何だったのか.
一転する恐怖.
正気の沙汰ではない.
娘を支配する母親.

一見愛情に溢れたように
見えたが,すべてが虚像.
それは娘への愛情ではなく,
所詮は自分への愛情.
エゴなのだ.
愛情と憎しみも
紙一重に違いない.

明らかに犯罪.

そして,まさかの展開.
こんなことが
本当に許されるのか.
異常な感情・行動.狂気.
娘を愛しているからこそ,
より恐ろしい,怖い.
愛は怖いのだ.
こんな理不尽な状況.

どちらが勝つかは
最初からわかっているが,
どのような形で決着がつくのか.
それが実に巧妙で上手い.

それはシンプルな登場人物の設定.
母と娘.この緊張感,演技は見事だ.
母娘の関係が徐々に
明らかにある過程が凄い.

「あなたのためを思って…」
って言葉がなんとも怪しい.
しかし母親が本気で,
そう思っているからこそ,
本当にたちが悪い.

限られた家の中,
母親のテリトリーの中で,
どうやって解放されるのか.
いかに脱出できるか.
どうあがいてもできない.

これは最初からスリルが
あってドキドキもの.
これは怖かったけど,面白かった!

スリラーは,グロい場面が
余りなくとも十分怖さは
アピールできる.
腕の見せ所でもある.
映画の醍醐味
息をつく暇が無い.

ラスト数分が
最も大きな見せ場.
特にエンドロールの数分前.
最後の台詞に戦慄が走る.
最後のオチが最高だ.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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