医療的幇助で亡くなったアンドレ・ラシャペルを思う「やすらぎの森」

やすらぎの森

オススメ度:★★★★☆(3.8)
理由:人生を振り返る,
そして今を生きる.
人は残り僅かな命をどう活かすか.
それは,大きなテーマでもあり,
極,身近なテーマだけに
向き合うために必要な作品に
出逢えた気がする.
大儲けの人生の最後をどう飾るか.
考えさせらる.

社会からリタイアした世捨て人.
ケベックの森の中で,
湖の畔に小屋をたて,
ほぼ世間からは行方不明の状態で
暮らしている3人の老人と愛犬.
大麻を趣味で栽培しながら自活している.

社会との窓口は,
スティーブという街でホテルを
経営する若者だけ.
週に一回株と交換に食料を提供.

カナダの森といえば,
最近では猛暑でカナダ西部、山
火事が170件以上発生したという.
避難支援で軍が待機した大惨事だ.

彼らの中には,そんな大惨事に遭遇した
老人もいる.彼のその記憶はトラウマ
となり,そうした絵画を多く残した.

山火事では空を飛ぶ鳥が,
熱波でバタバタと空から落ちてきた.
そんな情景が今も残っているという.

森とは,すべてが…
人生が,凝縮されて
いるようにも見える.

ある老人は余命1年と宣告され,
痛みに耐えられなくなったとき,
自ら安楽死を求める.愛犬と共に.

愛犬の道連れの命について,
少し考えさせられた.
それは身勝手なことなのだろうか.
いや孤独に耐えられないからの行動で
あれば許されるのではないか.

ピラミッドの棺には,
官女や動物も一緒に
あったことを思えば,
「死」とは,
その尊厳とは,
どう考えればいいのか,
だれを基準にすればいいのか,
わからなくなってくる.

そんなさなかに
老人組に新たに加わったに老女.
甥の助けによって施設から
抜け出した80代の女性だ.
彼女は10代から精神科病棟に
強制収容され以降60年も施設での
閉ざされた生活を
強いられていたという.

そんな彼女が,施設から逃げ出して
この森に住むことになった.
まさに80代から…
これまでの名前を捨て,
生まれ変わって生きていくのだ.

湖でゆっくり時間が
進むのもつかの間.
穏やかな生活は
そんなに長くは続かない.

世間から離れた場所で
死に場所を求めて
生きるようにも見える本作品.
それも良いのかもしれない

死は尊厳されるものではないか.
尊厳死は,延命治療を施さずに
自然な最期を迎えることで,
必ずしも安楽死ではない.
日本では医療的幇助も含め
犯罪にあたる.
安楽死は人為的に寿命を
短くさせることにつながるからだ.

そのことを考えると,
この老女のことを思う.

老女を演じたアンドレ・ラシャペル.
まさに彼女は医療的幇助を選択して
2019年11月に亡くなったのだ.
なんでも撮影の数か月後に
癌が見つかり,その1年後に
尊厳死を選んで医療的幇助を受けた,

残された時間をどのように使うか.
彼女が演じた老人の性.
胸を見せての迫真の演技.
性の喜び.

好きを我慢しない.
何年になっても,
どんなことにもタブー視せずに
前を向いて開放することが
あらためて大事なんだ.

そう思える.

その老人が弾き語るTom Waitsの”Time”(1983年)

Oh it’s time time time, and it’s time time time
And it’s time time time that you love
And it’s time time time

これはもう,何もなくなり,
最後は「死」だけが
人生の課題ではないだろうか.

残りの人生.いかに生きるか,
考える時間を与えてくれた作品だ.

投稿者プロフィール

天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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