余りにも強烈な結末に度肝を抜かれた「プロミシング・ヤング・ウーマン」

プロミシング・ヤング・ウーマン

オススメ度:★★★★★(4.9)
理由:これは凄い.これは鳥肌もの.
エンドロールの曲までもが
しっかり仕組まれている.
魂が震え,感情が揺さぶられ,
思わず手に強く握りこぶしを作った.
久し振りにテンションが上がった.

監督兼脚本のエメラルド・フェネル.
アカデミー賞5部門にノミネート,
脚本賞を受賞した作品.
劇場で観た予告では
想定もつかない展開.
予告を観て単なるオカルト・スリラーかと
想定してしまった.この予告から
監督の意図した本編へのしかけだった
のかもしれない.
創り込まれた脚本.
心の動き.

時にはあえて映像化せず,
音だけで
何が起きたかわかるような演出.

タイトルは
「明るい未来が約束された若い女性」
それもそのはず,
医大生で優秀だったのだから.

元医大生のキャリー・マリガン演ずるキャシー.
昼間は地元のキャフェメイドとして
働くが,夜は別の顔を持つ.
別人かのように変わるその演技.

だらしのない格好,
泥酔したフリをする.
女性を性のはけ口としか
思っていない男を
次から次へと
片っ端から制裁を加える.
それには理由があった.
大学生時代に体験した事件だ.

彼女が一見サイコのように
見えるが,
実は単純な
サイコ・スリラーでは
ないところが奥深い.

そんな毎日を繰り返す中,
新しいボーイフレンドとの交際,
徐々に幸せを取り戻す.

しかしそれも束の間,
一挙に幸せから奈落の底へ.
まさに急転直下.
目が離せない.

派手なアクションが
あるわけでもなく,
粛々と,
しかも虎視眈々と,
話が展開していく.
じわじわと
真綿で首を締める流れ.

ここまで大胆不敵とは…

理不尽に対抗するには
感情的なパワーと
沈着冷静な戦略が
必要だ,

序盤のハテナと思わせる
伏線がすべて回収される.
残りの十数分は驚くべき
急展開に舵を切る.

相手の弱みに
つけ込むことなく,
正々堂々と正面から向き合う
ことが必要だ.
デート・ドラックで,
女性を釣る.
お酒とかドラックの力を
借りて落とし込むことは
正義に反する.
人は犬とは違う.

本作品のメッセージは.
とても他人事に思えず,
自身の言動について,
振り返ることを
強く要求される.

果たして理不尽に対して
決着をつける,
ピリオドを打つ必要は
あったのだろうか.

決着をつけずに,「…」でも,
いわゆる卑怯かもしれないが,
曖昧に残すとか,
常に,ともに歩む道も
あったのではないか.

何もかも自身で対峙して
解決することまで
しなくともいいのでは
ないか.

社会に証拠を示し,
訴えて罰する方法も
あったように思う.

無限ループの中で
メビウスの輪のように
表裏一体で
果てしなく続く道のりに
あえて自ら入り込まなくても.
そんなふうに思えた.

自分の過去の記憶は
記憶の書き換え,
いわば言い訳によって,
心のバランスが平衡を
保っているのかもしれない.
都合の悪いことに蓋をし,
忘却の彼方へ追いやる.
潜在意識と顕在意識の
間(はざま)で,
心の均衡を保っている.
まるで,
それはパラレルワールド.
その中で生きているようだ.

自己嫌悪,
自暴自棄に陥る毎日.
あの時,
してやれなかった思い.

それにしても
キャリー・マリガンは
何歳になっても美しい.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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