学校にやはり返ってくる見応え十分な「返校 言葉が消えた日」

返校1

オススメ度:★★★★☆(4.1)
理由:Netflixでドラマ「返校」を
観てから本作見れば,
もっと良かったかもしれません.
知れば知るほど奥深い「返校」.
「返校」とは,最後は必ず学校に
返ってくること.
でも本当の意味は,自殺した霊は
現世でしたことを後悔して,事実を
認めようとせず,自分のした行為を
何度も何度も繰り返すという.そこで
亡くなった高校生が繰り返す
ということで「反校」となったと推定.

はじめは多彩な構成で面くらうが,
後々考えるとその構成には
相当仕組まれていて,優れた構成に
なっている.

韓国映画といい,台湾映画といい,
最近は見応え十分な作品が多い.

返校2

原作は台湾,ホラーゲーム「返校」
というものらしい.ゲームも映画化
になるものなんだ.
全く知らずに鑑賞しても
遜色はないと思う.
しかしもっと深めるなら
ドラマを先に観た方がいいかも
しれません.

国民党政権下の白色テロ時代を
題材に描いた作品.
白色テロとは,
Wikiによれば
中国国民党政府が反体制派に
対して行った政治的弾圧の
ことのようだ.
1947年の二・二八事件から
1987年に戒厳令が解除される
までの期間.反体制派と
みなされた多くの国民が
投獄・処刑された.
あの李登輝元総統も
留置され尋問を受けたらしい.

本作は,その暗い時代を
まともに受けてドラマ化
したものではない.
いや,むしろそれを逆手に
とって超常現象を取り入れた
ホラー映画としている.
実に発想が多彩だ.
この脚本は素晴らしい.
実にシンプルなストーリー
でありながら,
時間軸がまるで
リアルパートとイマジナリパート
とが交差する,
その表現・演出が面白い.

わが国では
恐らくは戦中の憲兵隊による
レッドパージの時代が
該当するかもしれません.
その頃を題材にした作品は
実にシリアスなものが多いと思う.
しかし,こうした本作のような
ホラー・エンタメにした作品は
実に少ないだろう.

非現実の世界は虚構の世界,
他方リアルな世界と並走する時間軸.
これぞ映画の醍醐味ではなかろうか.

そうした中国国民党による
独裁政権の中にあって,
国民に相互監視,密告が当たり前の
世の中.
禁書を学校に持ち込み
読みふける学生.
しょっぴかれる先生たち,
一体誰が密告したのか.
言論統制で生きる世界で,
いかに言論や表現の自由
というものが素晴らしいかを
彷彿させらる.
指導した先生等は処刑され,
禁書を楽しんでいた学生は
拷問を受け続ける.

実に残酷で,R15+.
それでいて切ない想い.
どんな時代でも,
「生きていれば自由になれる」
そんな時代がくるはずで,
死んだら誰しも「お終い」なのだ.
肉体は大切に
メンテナンスしながら
今世で生きていくことが
先祖から脈々と受け継いた
もののつとめのような気がする.

家族愛,夫婦間の感情.親子.
友達.先生と生徒.
何を優先し何を裏切るか.
逃げられる時にそれを放棄して
しまう切なさ.結構深く,
その脚本の脱帽です.
時折泣けるのはその切なさから
なのかもしれません.
私欲.嫉妬.
いろいろと考えさせれます.
見応え充分な作品.ぜひNetflixで
ドラマを確認して
みてはいかがでしょうか.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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