いずれ誰しもが訪れる老い,認知症をテーマにしたホラー「レリック -遺物-」

レリック1

オススメ度:★★★☆☆(3.4)
理由:メッセージ性の強いホラー作品.
老いについて,そして介護の問題について,
考えさせられる.悪霊に取り憑かれた家と
老いの恐怖.優しい祖母,殺気立った祖母.
その豹変ぶり…言動に,まさに日常の中から
非日常の恐怖を感じる.

本作はホラーではあるが,ドンピシャの
ホラーではない.結構考えさせられる
複雑な思いがした作品だ.
田舎で一人暮らしの祖母が失踪したとの
一報を受け,娘と孫娘が駆けつけた.
家中,荒れ放題.これは荒らされたのか.
それとも認知症の傾向が根強いからなのか.
大規模な警察沙汰になり,捜査しても
祖母は見つからない.
しかしそんなある日…突然ダイニングに
祖母が現れる.
何事もなかったように装う祖母.
しかし,見た目よりも,
その言動,様子が少しおかしい.
一見まともにみえるが,
言葉の端々,その行動に
不自然さがみえてくる.
優しい顔と殺気立った顔.
双方を持つのははたして
認知症のせいなのか?
それは認知症なのかそれとも…

家には何か魔物が住んでいるのか,
なぜか空耳のように
壁の奥から声が聞こえる.
それも幻覚なのか.
この凍るような恐怖感は何なのか?
見ているうちに
どんどん緊張感が増してくる.
じわじわと増幅してくるこの感覚.
じっくりと迫りくる恐怖感.

一人暮らしの高齢が増えている現在.
孤独死も時折流れるニュースで聴く.
発見されたときには,
死後数ヶ月が経過し,
すでに白骨化しているらしい.
そもそもレリック=遺骨とは,
そういう意図があるようである.

大好きな祖母が,そんな白骨化
するような悲しい.寂しい姿で
発見されるほど悲しいことはない.

そういう意味では,
ホラーという怖さより,
孤独死,家族,親子,認知症など
身近な高齢者問題について
考えさせられる作品だ.
出口の見えない日常の闇に
一つの投げかけをしたような
作品になっている.

エンドロールの数分前が
まさにスリリングで面白い.
ラストの解釈はハテナ?が
残る場面もあるかもしれないが,
そこはおそらく観ている側が
どう感じるか.どう腑に落とすか
考えるべきことなのだろう.

介護問題とは,
介護する側と介護される側,
それぞれの立場で考えることだ.
自分事か他人事か.
双方にもそれぞれの立場がある.
重くのしかかるテーマであり,
わが国の高齢者引き篭もり8050,
50歳の息子が
80歳の親の面倒をみる.
面倒を見るために
働きざかりの50歳の子は
会社を辞めて介護に専念する.
そこに介護疲れの問題もある.
最後に寄り添うシーンは,
どんな意味があるのだろう.
不思議な感覚だ.

レリック2

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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