中谷美紀が凛々しく魅力的だった「総理の夫」

オススメ度:★★★★☆(3.4)
理由:気楽に何も考えずに
見ることができる.
そんな中にも女性の社会進出問題に
向き合った作品.あり得ないと
思えるような理想を追求した部分も
確かにあったかもしれません.
でもそこはエンタメ.
だから映画だと思いたい.
鑑賞して「ほっこり」するには
オススメの作品です.

出張から帰ってきたら,
なんと妻が総理になっている…
そんなぶっ飛んでいる内容だけに,
この小説を映画化にする.
ありえないものを如何に描くか.
まさに映画の醍醐味.

原作は原田マハの小説
『総理の夫 First Gentleman』.
原作があれだけ多い登場人物.
しかも複雑な政治の駆け引き.
この小説をどのように捌いて
限られた映画という時間の中に
収められるのか.
政治の駆け引きの場面は
想定どおりカットされては
いるものの,
さすが「チアダン」
「かぐや様は告らせたい」の
河合勇人監督.
その手腕は見事.
要所を抑えたエンタメ作品の
仕上がりでした.

総理の夫,相馬日和を演ずる田中圭,
総理,凛子を演ずる中谷美紀.
そんな中で脇役の小沢一郎を
モデルとした原久郎演じる岸部一徳.
実にいい味を出してます.

鑑賞中に頭を過ぎったのが,
あのベストセラー
『スタンフォードの権力のレッスン』だ.
本書には,権力を持った大物がなぜ,
スキャンダルで失脚するのか.
一見取るに足らない人物がなぜ,
権力を握ることがあるのか.

自分を強く見せる,
あるいはリスクヘッジのために
弱く見せるための
「パワーアップ」と「パワーダウン」の
使い分けや「プロット」から
外れない戦略など.
まさに本作品と重なりました.

それは正論であり,権限もある人が
そのパワーを発揮すると,
その人は集団から疎外される
可能性があるということ.
特に地位や公式の権限しか
権力の源泉を持っていない
人の場合には,特にその危険性が高い.
まさになるほど…と
唸らせる作品.
政治エンタメ作品というと,
「記憶にございません!」
もあったか,それと比べると,
観客の想定範囲内の内容で,
見事に騙されたという
シーンは少なかった.

でも,シリアスに見れば
夫が妻に嫉妬するかもしれない.
なんといっても一国の総理が
自分の妻.そこはエンタメ.
シリアスにドロドロさせない
ところもまたいい.

見せ場の最後の記者会見の
シーンはそれを見事.
部外者が入れるのは
あり得ないことではあるが,
そこは映画,
そこを寛大に観ないと
この一番の見どころが
台無しになりかねない.
それだけに最後のシーンが
見どころなのだ.

本作の結末は原作小説と
違った部分がありますが,
非常に暖かい作品でもある.

最後に総理の夫の日和
座右の書,
コンラート・ローレンツ博士
『ソロモンの指環』には,
こんな一節がある.

『誰もが見ていながら,誰も気づかなかったことに気づく,研究とはそういうものだ』
言われてみれば,
「ああそうか」と思うこと.
最初の一歩が肝心だ.

投稿者プロフィール

天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。名古屋工業大学客員准教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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