ライトボディの感覚その味わいが心地よい「そして、バトンは渡された」

そして,バトンは渡された

オススメ度:★★★★☆(4.2)
理由:現実はそんなに甘くない…
だからこそ,そうした作品を
味わう寛容さが必要だ.
作品の中に随所に隠されたもの,
不安や自身のどうしようもない感情と
どう対峙していくか.
軽いタッチの作品の中に
隠されたものを感じとる
自身の感性が試されている.

序盤から中盤は,
コメディタッチ.
後半は涙あり,笑いあり…

あの本屋大賞,
瀬尾まいこの100万部の
ベストセラー小説の映画化.

3人の継父と1人の継母.
全く血の繋がらない親が
バトンをつないでいく.

そこにはドロドロとした
複雑な関係もなく,
なぜか心がほっこりする作品.
現在と過去を行き交う文章構成
の多い小説を一体どうやって
映画にするのか?

監督は
「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」の前田哲監督.
それぞれの思い,
特に梨花の思い,
石原さとみが演じている.
主演の森宮優子を演じる永野芽郁が,
そしてその継父役の森宮壮介を
あの「総理の夫」の 田中圭が演じる.

複雑な生い立ち,
そのせいか生きる術,
八方美人に振る舞う.
単にそれだけでも
なさそうな深い気持ちも
あるかもしれない.

しかし,
そこを軽く流していく
ところにこそ,
この作品の良さも
ありそうだ.

むしろ複雑だからこそ,
淡々と送る日常にこそ,
意味を求めるのでは
ないだろうか.
暗く重い闇を
あえて吹っ飛ばす…
そんな生き方が
できたら
もの凄く楽な生き方が
できるはずだ.

3人の父,そして2人の母.
姓を3回変え,
家族の形は7回も変わった,
そんな複雑な家族事情.

継父の「森宮さん」のような
暮らし方.
おいしい食事.
ダジャレが飛び交う家族団らん.

自分の為の家族であり,
家族のための自分.

迫真の演技となる
ピアノ演奏は見どころ.

そして想いの詰まった手紙

▼▼少しネタバレになりますが,▼▼
父親から届いた手紙を
隠したい梨花の気持ちもわかる,
よりもっと複雑な感情を
あえてここは抑えて
表現するところが
物語流れに
一層勢いがでる.

義理や人情が
希薄になりつつ
風潮の中にあって,
愛情をいっぱい受けて
育つことの大事さ.

それが心を打ち,
そして心に沁みる.

少し…
現実には
あり得ない
設定かもしれないが,

かといって
すべからく
経験に基づいた
ノンフィクションで
なくてはならないこともない.

ワクワクするような
話が少い現実から
ファンタジーの世界へ
誘ってくれる作品.
そうした作品に
触れることも
必要かもしれません.

自分に素直に生きるには,
辛抱,我慢.自身の未熟さに
気がつくこと,

理想と現実,
少し夢物語的な要素も
あるが,韻を踏んでいる気もする.
いじめ問題.
実際はそんなに
単純ではなく闇が深い気もする,

でも,
こんな理想があっても
良いのではないか.
継父の暴力もなく,
愛情がいっぱいな世界観.

大変な境遇に耐える
辛抱よりも,
それを受け入れ,
あっけらかんと
暮らしていくことが
どれほど大事なのなの
かもしれません.

たとえ現実は
そんなに簡単ではない
としても.

本作は
最初は薄っぺらな
内容のように思える
特に
梨花の自由奔放の行動に.

しかし,しかし…,
この小説の仕込みが凄い,
まだ小説を読んでいないなら,
読まずに是非劇場に
足を運ぶことをオススメします.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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