オススメ度:★★★☆☆(3.4)
理由;長編歴史小説を
すべて見せるには難しい.
原作を忠実に再現しては
時間が足りない.後半は駆け足になる.
ダイジェスト版になってしまうのは
致し方ありません.
小説を先に読んでから,
その映像を劇場で再確認する観方が
合っている気もします.
原作は司馬遼太郎の歴史小説.
2度目の映画化のようだ.
土方が「バラガキ」と
呼ばれていた幼少の時代から,
あの箱館五稜郭での壮絶な死までの
生涯をまとめたもの.
土方歳…その生き方は
まさにバラガキ.喧嘩がしたい,
それ自体が目標に
なっている生き方だ.
土方歳三を岡田准一が演ずる.
佐幕派といった思想も
彼には持ち合わせていなかった
のだではないか.
だから司馬遼太郎は
彼のことを「喧嘩師」と
言っているのだ.
剣術は一流.喧嘩は大好き,
もちろん女性も大好き.
バラガキとは,
茨のようにうかつに触れれば
怪我をすることが
発端のようだ.まさに土方歳三に
触れると怪我をする.
「新選組」が結成までの経緯.
京での暮らしぶり.
土方は喧嘩師ではあるが
ただの馬鹿ではなさそうだ.
その証拠に
何しろ西洋軍隊を参考に,
組織と法をつくったようだ.
水戸浪士の芹沢の粛清.
「池田屋事件」その後,
「蛤御門の」変へと続く.
新選組の名は不動のものとなり,
幕臣待遇となった.
その影には土方の戦略が
あったと思う.
しかし彼は,
地位とか名誉には興味がないのだ.
龍馬の画策で薩長同盟がなり,
幕府の足元は揺らぐ.
大政奉還により政権を朝廷に
返上した後は,
幕府が事実上消滅と化し,
「新選組」の存在意義も,
もはや無くなったも
同然である.意味の無い
存在に加担する意味は何なのか.
幕府に殉ずる土方の心情.
たまたま運で幕府方に
ついただけで,
倒幕方につく可能性も
あったと思う.
でも,土方には
そうした思想が
感じられない.
義理と人情.
節義を重んじる
彼の生き方,
無鉄砲で一途なものの考え.
おそらく彼は
本当に喧嘩師なだけ
の人物なのかもしれない.
とにかく
その腕は神がかっているのだ.
なぜかそこには
「滅びの美学」を感じる,
不器用で,
ストイックなまでに
真っ直ぐなその生き方.
そんな生き方が
惹かれるし,
彼の魅力でもある.
あの曲がらない信念.
人はここまで徹底して
戦えるものなのか,
あくまで徹底抗戦.
それでいて情に厚く
人を想う心を持っている.
思想は違っても,
日本を立派にしたい
思いは同じなのだろう.
幾多の修羅を経て
時と共にスケールも
大きくなっていく
戦いの舞台.
最後まで彼の
真っ直ぐさに圧倒された.
「新選組」は,
幕末のわずか
6年しか存在しない
刺客集団.
最盛期には200名を
超えるまでに
膨れ上がった組織でもある.
芹沢鴨,池田屋事件,
孝明天皇の謎,
慶喜の本陣大阪城から
江戸への逃走.
沖田総司の生涯,
松平容保,山崎丞,
関白近衛….
歴史にもしも…はないが,
随所にチラッと見え隠れし,
考えてしまう.
そうした幕末のことを
思い起こすいい機会になった作品だ.
投稿者プロフィール
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人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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