児童虐待がテーマの作品「189」

189

オススメ度:★★☆☆☆(2.4)
理由:厚生労働省推薦作品だけに,
なんとなく水戸黄門的な仕上がり.
昭和時代の香りすらする.
いっそのことドキュメット作品の方が
良かったかもしれない.
内容があまりにも単調ではないか,
児童虐待というシリアスな内容だけに,
正直言って『君は永遠にそいつらより若い』と
比較すると随分見劣りする作品だ.
リアリティ,迫力が足りない,
惜しい作品だ.それでも中身は結構重く
ショッキングな出来事の連続である,
それだけに実に惜しい.

本作は,児童相談所の虐待対応ダイヤル
「189」がタイトルになっている.
助けを求める小さな命を救うことが
できるかどうか.実際にあった事件から
着想を得たオリジナル脚本らしい.

児童虐待をテーマに親と子.
その虐待から助けようとする
児童福祉司.「児相」とは
児童相談所のことだ.
福祉予算は削られているのか,
人手不足の様子が垣間見れる.
ストーリは,確かにわかりやすい.
しかし最後はサスペンスドラマの
ような展開で事件簿のような形で
終わっている.

しかしまあ,児童虐待.
どうやって逃げられない子ども
環境にいて,
ようやく運よく児童施設に
脱出できても,
満床を理由に親元に
返そうとする行政.
逃げ切れない現実から
どうやって逃げたらいいのか.
運の良い子どもだけが
助かるのも何だか理不尽.
立ち向かうには武器がいる.
そんな武器すら,
子どもには身にまとうこと
すらできないのだ.

法の立ち遅れ,
児相の権限の問題,
核家族で昔のように
わきあいあいではない
隣近所さん,支援,
子どもの人権保護は
社会問題と絡めて根が深い.

一方児相の職員に目をやると,
仕事に責任を感じてしまう
職員と,その真反対に,
定刻通り,マニュアル通り
決められたことを
淡々とこなしていく職員.

そのさじ加減が難しい.

限られた24時間を
仕事だけに費やすことも
難しいが,その一方で,
プライベートと仕事を
きっちり割ることは
できないのも確かだ.

仕事のときに
プライベートのことも
考えるし,その逆もある.

最後は人として
できることをする,
ということかもしれない.

縦割り行政の中で,
役所と警察,そして
学校の先生,医療機関,
巧く連携することが
求められているのだろう.

作品のように
子どもの虐待が発覚されたら,
都合よく雲隠れする親,
その結果,最悪の場合は
転居届を役所に出さずに
消えると,子どもは
義務教育すら
受けられない状態に
なってしまう.

他方,児相の職場で
メンタル職員が発生した場合は,
補充問題.要員逼迫も想定される.
予算の問題.あらゆる矛盾と
現場の疲弊感.

本作は,パンチ力に欠ける作品
ではあるが,少なくとも
あらゆる弱者貧困に
手を差し伸べる活動の
一助にはなっている.

児相に関心が
向けらたことは確かだ.
作品内容は別にして
一石を投じたことは
評価したい.

投稿者プロフィール

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天雨 徹
人財育成、技術系社員研修の専門家。東京都市大学特任教授。博士(工学)。修士(経済学)。専門は「電力システムネットワーク論」著者に「IEC 61850を適用した電力ネットワーク- スマートグリッドを支える変電所自動化システム -」がある.ブログは映画感想を中心に書いている。
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